[ケアビジネスSHINKA論 Vol.3184]

送迎事故の報道を考える

おはようございます、金曜日担当の尾添です。

9月18日のこと。
デイサービスを利用した87歳の女性が送迎後、自宅アパートの階段で転倒して亡くなった
事故をめぐり、東京地裁が事業者側に1,800万円余りの賠償を命じたと報じられました。
報道だけでなくXなどSNS上でも様々な意見が飛び交い、ご存じの方も多いはず。
当事者でもなく判決全文を読んだわけでもないので、軽々しく発言することはできません。
が…やるせません。

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■■ 送迎事故の報道を考える
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◆繰り返しになりますが報道の概要について。
デイサービス利用者の87歳女性が、送迎後に自宅アパートの階段で転倒し亡くなった事故
について、東京地裁が事業者側に約1,800万円の賠償を命じました。
報道によれば、事業者は事前に筋力低下や入院歴などの情報を得ており、「危険を具体的に
予測できたはず」と判断されたようです。
(判決全文は未確認のため、一部は推測となりますことご了承ください。)

◆保険の適用がなされるのかもしれませんが、この1,800万円という数字は経営・運営面は
もちろん、通常のサービス提供において判断されたという事実面でも大きな意味を持ちます。
この報道を見聞きした現場担当者の多くが、「玄関まで送った後の転倒まで責任を問われる
のか…」という気持ちになったのではないでしょうか。
他でもない私自身も、当初そうでした。

◆介護の現場では、転倒、誤嚥、送迎事故など、どうしてもリスクが発生します。
だからと言って、このニュースを受けて「とにかく事故を起こさないこと」だけを目的にし
てはいけません。
別の視点からの懸念は、リスクを極端に恐れるあまり「歩かせない」とか「外出させない」
という思考停止に陥ることです。

◆厚労省のガイドラインにおいて、介護現場の事故を「対策を取り得る事故」と「防ぐこと
が難しい事故」に分けられており、すべてが事業者の過失とは限らないとしています。
そもそもの介護の役割として、特に審議会等でも「自立支援」や「科学的介護(LIFE)」の
重要性が議論される昨今、過剰なリスク回避は国の目指す方向性とも逆行します。
「事故をゼロにすること」が介護経営の正解ではありません。
問題は、その人にどんなリスクがあるのかを把握し、そのリスクに対して何を検討し、何を
したのかなのです。

◆厚労省のガイドラインを見ると、今回の事故で注目されている「送迎」についても具体的
に書かれています。
自宅へ送り届ける際には「安全なところまで介助をして送り届ける」こと。
さらに、玄関等での事故への対策として、送迎時の責任範囲、つまり「どこまで見届けるか」
を契約時に確認することまで示されています。
ここで注意したいのは、「では全員、玄関の中まで送ればいい」という単純な話ではないと
いうことです。
そうではなくて、「情報は持っていた。でも誰も判断していなかった。」と見做されること
が怖いのです。
アセスメントには「筋力低下」と書いてある。
ケアマネから「最近ふらつく」と聞いている。
家族から「この前転んだ」と聞いている。
でも、それが送迎方法の変更につながっていない。
そして送迎担当者は何も知らない。
記録にも残されていない。
これは個々の職員の注意力だけでは解決できません。
完全に組織としての「仕組み」の問題です。

◆私自身、現在も通所介護事業を経営する身として今回の件は人ごとではなく、思うところ
は多々あります。
でも不満や見解を述べるだけではダメです。
ご利用者の身体や生活情報の確認と把握、解除方針の決定・変更と実施。
それらを記録として残し、全スタッフと共有すること。
今一度、自分たちのやるべきことを再確認する機会にしなければいけません。
そして、事故を恐れて「何もしない介護」はしたくありません。

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「デイサービスの本質は施設の中で提供するサービス」と考えがちです。
でもご利用者から見れば、自宅を出て、サービスを利用し、無事に自宅へ戻るまでが一連の
サービスです。
厚労省のガイドラインでも、通所系サービスについて、自宅と施設を行き来すること自体に
環境変化によるリスクがあり、家族等との情報共有が重要だとしています。
そう考えると、送迎は決して「付随業務」ではありませんね。

そんなことも考えさせられる、今回の事件です。