[ケアビジネスSHINKA論 Vol.3180]

従業員退職型倒産という恐怖

おはようございます、金曜日担当の尾添です。

なんでしょう、この言葉から滲み出る怖さ。
「従業員退職型倒産」
想像したくないけど、その意味が想像できてしまいます。
起こってほしくないけど、増え続けています。

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■■ 2027年度厚労省概算要求
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◆介護業界で人材の話になると、どうしても「採用できない」に目が向きます。
しかし今、もう一つ無視できないのが、今いる職員が辞めることで事業が立ち行かなくなる
リスクです。
それこそが「従業員退職型倒産」。

◆帝国データバンクによると、人手不足倒産のうち、従業員や経営幹部の退職が直接・間接
的な要因となったいわゆる「従業員退職型」倒産は、2025年に124件。
前年の90件から37.8%増え、初めて100件を突破しました。
さらに2026年1?7月は83件で、前年同期比12.2%増。
過去最多のペースで推移しています。

◆注目したいのは業種です。
2026年1?7月では「サービス業」が22件で最多となっていますが、帝国データバンクに
よると、老人福祉施設などでの発生が多かったとのこと。
もちろん83件すべてが介護事業者という意味ではありません。
しかし、日頃から少人数運営に苦しみ、また資格者や管理者、経験者に業務が集中しやすい
介護事業所にとって、この問題は他人事ではありません。

◆帝国データバンクはその背景として、コスト上昇分を価格に転嫁できず「賃上げ原資」を
確保できない企業で、中核人材の流出を止められないケースを指摘しています。
介護保険サービスは、一般企業のように事業者判断だけで自由に価格を上げにくい業界です。
人件費をはじめ費用面が上がる一方、収入側の自由度は小さい。
この構造を考えると、「退職型」の問題は介護経営にとって特に重いテーマだと言えます。

◆実際、最新の令和7年度介護労働実態調査では、人材が「不足」とする事業所は65.8%。
訪問介護員・介護職員の離職率は12.4%、採用率は14.6%でした。
離職率は長期的には改善傾向にあるのですが、人手不足感は依然として強い。
採用が難しい市場では、一人の退職を補充できないこと自体が経営リスクになるということ
です。
さらに、直前の介護職を辞めた理由では「職場の人間関係に問題があった」が27.3%で最多。
「勤務先の事業理念や運営のあり方への不満」が21.0%で続きます。
そうです、給与だけの問題ではありません。
賃上げはもちろん重要ですが、管理者のマネジメント、コミュニケーション、休みやすさ、
業務負担、理念と現場運営のズレなど、経営側で改善できる領域も大きいのです。

◆厚生労働省も介護人材確保策として、処遇改善や多様な人材確保と並び、「離職防止・
定着促進・生産性向上」を明確に柱の一つに掲げています。
また、他産業への人材流出を防ぐための賃上げと、業務効率化・職場環境改善による離職
防止を一体で進める必要性も示しています。
このメルマガでも何度か取り上げてきましたが、2040年度には約272万人の介護職員が
必要とされ、2022年度比で約57万人の上積みが必要です。
採ることだけでは、この数字にはなかなか届きません。

◆これから経営者が見るべき人事KPIは「応募数」「採用数」だけではありません。
退職者数、退職理由、勤続年数、管理者への業務集中、有休取得、面談実施状況など、
「辞める前の兆候」を把握できているか。
採用活動は人事における“攻め”です。
今いる人が辞めない組織をつくることは、事業継続そのものを“守る”ことに繋がります。
「求人を出しても来ない」と嘆く前に、「今いる職員が、ここで働き続けてくれるのか」。
大きな経営課題です。

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属人的経営からの脱却…と簡単には言えない業界です。
しかも、本文中でも触れましたが、事業者には価格決定権がありません。
難しい局面ですが、その困難はそのまま事業者に課せられる。。
介護・福祉・医療事業の安定は、その事業者だけではなく地域や社会全体にも影響する
問題です。