[ケアビジネスSHINKA論 Vol.3188]

行方不明者の介護保険料

おはようございます、金曜日担当の尾添です。

もし、65歳以上の大切な家族が、認知症などによってある日突然家を出て、そのまま行方
が分からなくなったら。。
家族は警察に届け出て、心当たりを探し、無事を祈りながら帰りを待つことになります。
そんな状況で、意外な問題になることがあります。
本人が行方不明になっても、介護保険料が自動的に止まるとは限らないのです。
この問題について先日、国が通達を出しました。

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■■ 行方不明者の介護保険料
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◆65歳以上の人は、原則として市区町村の介護保険の「第1号被保険者」です。
ところが本人が行方不明になったからといって、その時点で介護保険の資格が自動的になく
なるわけではありません。
住民票の消除など、資格喪失の手続きに時間がかかれば、その間も介護保険料が賦課される
場合があります。
そして、普通徴収の場合には本人だけでなく世帯主や配偶者にも納付義務が及ぶことがある
ため、行方不明者を探し続ける家族に事務的・経済的負担がのしかかることもありました。
今回、国が対応に動いたきっかけの一つも、行方不明者の家族から寄せられた介護保険料に
ついての行政相談だったようです。

◆今年9月、厚生労働省は全国の自治体に「介護保険最新情報Vol.1541」を発出しました。
https://www.mhlw.go.jp/content/001747516.pdf
ポイントは、行方不明者の住民票の消除に時間がかかる場合、家族の負担も考慮して市町村
が介護保険料を減免してよいと明確にしたことです。
さらに、事情によっては全額免除としても差し支えないと示しました。
ただし、全国一律で介護保険料が自動的にゼロになる新制度ができたわけではありません。
介護保険法にもともとある減免制度について、行方不明者にも適用できるという取扱いを国
が全国の自治体に整理して示したものです。
実際の減免や必要な手続きは市区町村によって異なるため、家族が行方不明になった場合は
まず本人が加入する市区町村の介護保険担当窓口に相談が必要です。

◆もう一つ重要な点があります。
一般的な「普通失踪」では、生死が7年間分からない場合には家庭裁判所への申立てによって
失踪宣告を受け、法律上死亡したものとみなされることがあります。
今回の通知では、失踪宣告などによって過去に遡って死亡したとみなされ、介護保険の資格
も遡って失われた場合、死亡したとみなされる日の翌日以降に課された介護保険料は無効に
なると整理されました。
すでに納めた保険料があれば、市町村には返還義務が生じます。
しかも、その返還を求める権利の時効については失踪宣告が確定した日から数えるのが適当
だとされています。

◆「自分の家族にはまだ関係ない」と感じる人もいるかもしれません。
でも警察庁が2026年6月25日に公表した統計によると、2025年に認知症またはその疑いを
原因・動機として行方不明者届が出された人は、延べ1万7,345人。
1日平均にすると、約48人です。
前年より776人減ってはいるものの、警察庁は依然として「高い水準」としています。

◆ただ、同じく警察庁の統計によれば、2025年中に所在・死亡確認された認知症行方不明者
の約95%が、届出受理から3日以内に確認されています。
GPS機器などを活用して発見されたケースでは、139人のうち118人、84.9%が受理当日に
所在確認されました。
警察庁もGPS機器等を迅速な発見に有効としています。

・スマホやGPS機器、タグなど、本人が普段から身につけられるものを準備しておく。
・自治体に見守り・SOSネットワークやGPS機器の貸与・助成制度がないか調べておく。
・最近の顔写真や、よく行く場所、服装、連絡先を家族で共有しておく。
・いなくなったと気づいたときには、ためらわず早めに警察や関係機関へ相談する。

◆行方不明を完全に防ぐことは難しくても、「もしもの時にどう動くか」をあらかじめ家族内で
決めておくことはできます。
そして、いざという時のために制度について知っておくこと。
いずれも、大事な備えです。

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「家族がいなくなったのに制度上の手続きだけが進まず負担が残る」という、現実の家族の困り
ごとへの対応策。
今回の厚労省の通知は、一見すると非常に専門的で小さな行政ニュースですが、いざへの備え
として、また業界に関わるものとして知っておきたい事項です。