奇跡の皆勤賞!~あるご利用者との関わりから~(後編)

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(シー・ビータッグ)の原田匡です。

さて、今日は昨日のお話を続けさせて
いただきます。

スタッフのことを

“人殺し”

と呼んだサトさんとはその後、どうなった
のか(笑)。

引き続き、お読みください。

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「人殺しだよ! この人は!! ひどいこと、すんだよ!」

(えぇ!? 人殺しって、そんな・・・)

さすがにショックです。

でも、そんな感傷に浸っている間もなく、

スタッフから逃れようと必死のサトさんを
押さえるのに精いっぱい。

いったい、こんな小柄な体の、どこにそんな力が
あるのでしょうか。

(電車が近づく踏切で、サトさんを離すわけには
いかない!)

必死でサトさんを押さえるスタッフは、

両手が使えません。

とっさに、道を行く人を呼び止めて、

「す、すみませんっ! ○○○-○○○○まで
電話をして、

迎えに来てくれるよう伝えてもらえませんかっ!?」

と見ず知らずの人にお願いして、

ようやく連れて戻ることができた日もありました。

【段落4:「徘徊」ではなく「お散歩」】 

毎回、あずゆあはうすに到着してはすぐに外に出られ、
連れ戻そうとするスタッフと追いかけっこ。

「帰りたい!」

とおっしゃるサトさんの様子をご家族に電話で説明して、
予定より早めの時間にご自宅に戻られる――

サトさんが来られるようになってから、すでに1年が
過ぎようとしていましたが、当初と何も変わらない
日々が続いていました。

「サトさんが、皆勤賞を取れるようになるのはいつでしょうね」

半分本気、半分は諦めの気持ちで、ケアマネージャーさんと
そんな会話をしていたある日のこと。

サトさんはたまたま、いつもズンズンと歩いていく方向とは
違う方角に歩いていきました。

たどり着いた先は、広い公園。

公園の中ほどは小高い山のようになっています。

ニッコウキスゲのような黄色いきれいな花が咲いているのを
見たサトさんは、すっかりこの公園が気に入った様子です。

「昔は、家の周りに木が植わってて、きれいだったんだ・・・」 

ポツリとつぶやくサトさん。

それ以来、あずゆあはうすを飛び出して歩いていくのは、
もっぱらこの公園になりました。

公園は「おやま」と呼ばれるようになり、サトさんの
お気に入りの場所になりました。

同じころ、スタッフは無理にサトさんを引き止めることを
やめてみることにしました。

サトさんの一挙手一投足に目を光らせるようにするのをやめ、

「サトさんが出るなら、出ていただいてもいいじゃないか」

と受け止めるようにしました。

サトさんがどこかに行ってしまうのではないかと
心配なのは変わりません。

でも、どうでしょう。

自分の行動一つ一つに目を光らされ、ちょっとでも動こう
ものなら

「何するんですか?どこ行くんですか?」

と聞かれ、居たくもないのに

「ここに座っていてくださいね」

と、たいして知りもしない人から言われたら、

誰だって良い気持ちはしないでしょう。

スタッフの「効率優先」な声掛けやしぐさは、

サトさんにはお見通し。

礼儀正しいサトさんに対しては、

「言葉」と「行動」にも気を付けます。

サトさんが外に出られるな、

と思ったら、

「どこ行くんですか!?」

の代わりに、

「いい天気ですねぇ」

「緑がきれいですね」。

ムキになってサトさんの行動を制止するのを
やめました。

サトさんの行動を「徘徊」から「お散歩」と
捉えるよう、

スタッフの意識を変えたことで、

やがて不思議とサトさんの行動も表情も
落ち着いていくようになりました。

本当に少しずつ少しずつ、

薄紙を重ねるようにサトさんが穏やかになって
いくのが感じられるようになったのです。

「こんなところにも花が咲いていますねぇ」

「あ、雨が降り出しましたよ」

「いい季節になりましたねぇ」

「サトさん、疲れてきたから、お茶屋に
戻りませんか?」

お茶屋とは、もちろん、あずゆあはうすの
ことです(笑)。

「そうだね」

出かけても、ちゃんと戻ってこられる。

帰宅予定の16時まで、あずゆあはうすで
過ごすことができる。

2年を過ぎたころからようやく、

そんな日が増えてきました。

たまに、

「もう帰りたい」

と言われることがあっても、

「サトさん、このお帳面(連絡帳のこと)、
ちゃんと書いてから帰らないと、

お嫁さんから私が叱られちゃうんです。

もう少し、待っててくれますか?」

と言えば、

「あら、そんなこと言っちゃってるの?
じゃあしょうがないわね」

と、静かにお部屋で過ごしてくださいます。
(ごめんなさいお嫁様。)

また、食事のあとやおやつの後に、

食器を下げて洗ってくださるサトさんに

「ありがとうございます」

と言うと、

「やっかいになってるから、やっただけだよ」

とおっしゃって、手際よく食器を洗ってくださるのでした。

【段落5:昔の甲州街道話】

サトさんは、他のご利用者のみなさんと
ゲームに興じたり、

おしゃべりに花を咲かせたり、

ということは決してされません。

一人静かに、ご自分の時間を過ごされたり、

“おやま”に出かけたりするのがお好きです。

おやまに行き、

部屋に戻ってお茶を飲み、

食事をして自宅に帰る。

おやまを中心とした1日の生活が、

サトさんの心を穏やかにしてくれています。

あずゆあはうすのことは、

「お茶出してくれて、食事もいただけるところに
来られることは、いいこったいね(いいことだね)」

とおっしゃってくださいます。

週1だった通いの回数も、今では週4回。

もちろん皆勤賞です。

また、ご実家なのか、嫁ぎ先なのかは
わかりませんが、

サトさんは昔の甲州街道沿いの街の様子を
よくご存じで、

いろんな話をしてくれることがあります。

「昔はね、職人やらいろんな人が行き交って、
すごくにぎわってね」

「おせんべ、焼いていたの」

「みんな髪をきれいに結って。

“ちょいとお兄さん、寄っていきなよ”

っていうような店もあってね、

そりゃ華やかだったわねぇ」

「家から、駅が見えて、列車に乗る人たちが
よく見えたものよ」

「多摩川には、屋形船があってね・・・」

聞いていると、

生き生きとした街の様子が目に浮かぶように、

昔のこの辺りの話を聞かせてくださいます。

にぎやかな街。たくさんの人たち。

人の行き交う商店街。

四季を感じさせてくれる花や木々の豊かな緑や、

多摩川の流れる景色を、昔のサトさんは毎日
眺めていたのでしょう。

今のサトさんにとって、外へ出て

「行きたい場所」

は、古き良き時代の、昔の街なのかもしれません。

そして「おやま」は、そんな当時を思い出させて
くれる場所なのかもしれません。

いつでもシャキシャキ、手厳しいコトバの
一つや二つは当たり前のサトさんですが、

「またお帳面のお仕事かい?」

「はい、そうなんです」

「ご苦労なこったねぇ」

こんな何気ない会話から、サトさんの気持ちの
温かさを感じます。

昔気質で、

「人のお世話をすることはあっても、人に
甘えちゃいけない」

と、いつも毅然としているサトさん。

しかし、そんなキッパリとした気性のサトさんが
大好きだというスタッフもいるのです。

「サトさんの毎月の様子は僕が書きますね」

と言うそのスタッフは、

サトさんをドライブにお連れしたり、

おやまへの散歩にお供しています。

そんなときのサトさんは、超ゴキゲン。

そんなサトさんは、もう少ししたらお泊りに
トライします。

週1日の通いでも途中で家に戻ってしまった、

当時のサトさんのことを覚えているスタッフに
してみれば、

「あのサトさんがお泊り!?」

奇跡のようです!

あの頃、誰がサトさんが皆勤賞を取れることを
予想できたでしょう。

「人殺し!」

と叫ばれた日を思うと、

サトさんも頑張ったけど、スタッフも頑張りました!

今、決して静かとはいえないあずゆあはうすの部屋で、

一人楚々と座ってお茶を飲み、静かに過ごして
いらっしゃるサトさん。

行きたい場所へ、行きたいときに。

サトさんらしくいつまでも。

これからも、そんなお手伝いをしていきたいと思っています。

サトさん、またサトさんの好きなお花を持ってきますね!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

目の前のご利用者の

“行動”

ではなく

“心”

を見つめることが出来れば、

必ず通じ合える瞬間に出会える。

以前、感動するサービスを提供することで
有名な某外食企業から、

独立して介護の仕事を始めた方が、

私に語ってくれた言葉を思い出します。

“原田さん、

外食も大概感動の多い仕事だったけど、

介護はその比じゃないよ。

正直、大変なこともいっぱいあるけれど、

それ以上に感動することも多い。

つくづくすげぇ仕事だなって思うよ”

・・・・・・

皆さん、他産業出身の方が、

こんな風に感じているってご存知でした(笑)?

是非、誇りとやりがいをもって、頑張って
いきたいものですね。

以上、何かのお役に立てれば幸いです。

今日は久しぶりに東京で打ち合わせ&
デスクワーク。

雪はありません(笑)。

皆さんは今日、どんな1日を過ごされるの
でしょうか?

では、今日も1日、互いに頑張ってまいりましょう!

今朝もお付き合いいただき、ありがとう
ございました。
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           ~Visionary Care Company~

社会貢献と利益創出の両立に真剣で、成長・進化を目指す介護事業者に、
業界特性を踏まえた有益な経営情報の発信、及びツールの開発・提供を
行う。その結果、「地域で最も愛され、必要とされ、関わる全ての人々を
幸せに出来る会社=「Visionary Care Company」を多数創出し、介護業界
活性化の中心的存在となる。
それが私たち「シービータッグ」のビジョンです。
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