[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2878]

認知症基本法

みなさん、おはようございます。
金曜日のメルマガ担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。

よく聞く話ですが、日本における65歳以上の認知症罹患者数は2020年時点で約600万人、
それが2025年には約675万人になると推定されており、約5.4人に1人が認知症になると
予想されています。
介護現場では認知症当事者への対応は日常的なことかもしれませんが、いよいよ「誰もが
認知症を無視できなくなる」社会を迎えます。
そんな中で昨年に一つの法律が公布され、本年初に施行されました。
認知症の人が尊厳を保ち、希望を持って暮らし続けられる“共生社会”の実現を目指すため
の法律。
改めて注目してみたいと思います。

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■■認知症基本法
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◆2024年1月1日施行となったその法律は「認知症基本法」。
これは略名で、正式名称は「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」と言います。
そして法律の目的は「認知症の人を含めた国民一人ひとりがその個性と能力を十分に発揮し、
人格と個性を尊重しつつ支え合いながら、共生する活力ある社会(共生社会)の実現を推進
すること」です。
よく目や耳にするようになった「共生」という言葉がキーワードです。

◆この法律では様々な機関(関与者)の責務についても記述されています。
「国」「地方公共団体」「保健医療サービスまたは福祉サービスを提供するもの(医療・介護
事業者)」はもちろん、以下の二者についても触れられているのは特筆すべきことです。
「公共交通事業者、金融機関、小売業者その他の日常生活および社会生活を営む基盤となる
サービスを提供する事業者」と、そして「国民」です。

◆前者(公共交通事業者~)について、国や地方公共団体が実施する認知症施策への協力が
求められ、そして認知症の人に対する必要かつ合理的配慮をするよう努めることが求められ
ています。
共生社会において事業者として商品・サービスの提供を行うものとして、認知症に関して
しっかり理解し、また配慮を求めると明確に示されました。

◆そして後者「国民」について、法律には、認知症に関する正しい知識および認知症の人に
対する正しい理解を深めるとともに、共生社会の実現に寄与するよう努めることが求められ
ています。
あくまで緩やかな努力目標ではありますが、これから迎える共生社会において誰一人として
無関係な人はいないことが示されました。

◆認知症になってから(なった人へ)の取り組みはもちろん、法律には予防(認知症になる
前、または進行を抑制するため)の取り組みについても記載があります。
主には行政や関連事業者に向けたメッセージですが、以下のような内容です。
○認知症施策推進基本計画の策定
法律に基づいて各自治体は認知症施策推進基本計画を策定し、地域ごとのニーズに応じた
介護予防策が強化されることが求められる。
○介護予防の強化
認知症の予防に向けた具体的な施策が盛り込まれており、中でも早期発見や早期対応が重視
される。

◆以上、法律から抜粋して紹介しました。
業界に関わる人にとって当たり前の知識でも、そうでない人にとっては「言葉は聴いたこと
はあるけど・・・」という内容かも知れません。
でも、いつ家族(祖父母や両親等)が、知り合いが、お客様が、そして自分自身が当事者に
なるかわからない、平均寿命の延びとともに“我が事”として関わる確率は高まり続けます。
そのことに警鐘を鳴らし、そして施行されたのが「認知症基本法」だと考えます。
まだ施行して間も無く、また努力目標が示されたにすぎず、身の回りにおいて変化を感じる
のは少し先かもしれません。
それでもSDGsなどと同じく、個人も企業も誰もが無視できない、意識するべき問題です。

◆業務や自己啓発を通じて知識や経験を有している私たちに何ができるでしょう?
何をするべきでしょう?
報酬の改定や人員不足、競合の増加など、事業をするにおいて気を揉むことは多々あります。
これからも地域に役立ち、選ばれる事業者であるための戦略・戦術も様々かと思います。
その中で、今回採り上げた「認知症」は一つのキーワードとなりそうですね。
厚労省の通達をはじめ、これから出てくるニュースにも注目していきましょう。

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法律に関する詳しい内容は、是非ネットで検索してみてください。
分かりやすく解説されているページも多数あります。
ちなみに・・・医療・介護に関する各種資格試験でも出題確率が高いと言われている重要な法律
です。
新しい情報である分、出題もしやすいでしょうしね。
要チェックです。