[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2649]

街の自立

みなさん、おはようございます。
ケアビジネスパートナーズの尾添です。
明日の金曜日は祝日ということで、このメルマガもお休みとなります。
なので今週は本日、木曜日を担当させていただきます!

代表の原田が昨日のメルマガでショッピングリハビリの沖縄オープンについて書きました。
その事業責任者として、日ごろ感じていることを書いてみようと思います。

それでは本日のメルマガです!

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■■街の自立
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◆ショッピングリハビリの基本モデルは介護予防型通所介護(デイサービス)であり、介護
保険制度を使って運営しています。
パートナー(加盟店)の中には介護保険を使わず自費利用だけで運営する店舗もありますが、
事業としてショッピングリハビリをどう活用するのかを本部が指定することはなく、地域の
実情やニーズを誰よりも知るパートナーとともに個別に構築しています。

◆今週初、全国のパートナーとの定例研修会において本部からとして来年の報酬改定を巡る
動きについて触れました。
そして、会議中また事後に様々な意見や要望などをいただきました。
ショッピングリハビリを取り組む意義や地域・利用者の評判は大変高く、社員もやりがいを
もって取り組んでもらえていますが、介護予防の領域が報酬面で恵まれているかといえば、
決してそうだとは言い切れません。
そうなれば集客(営業)に注力することはもちろん、収益強化のために単価の高い方(重度
者)の受け入れや加算の取得といった方策を考えるようになります。
それ自体を否定するものではありませんし、むしろ果たすべき役割に対してしっかり報酬と
して請求することは当然のことです。

◆それでも会議終了後に本部内でも話をしましたが、目指す社会の在り方や我々の役割の果
たし方といった理想と、感染症やルールの壁など様々な課題に直面しながら事業継続のため
日々奮闘する現場の実情と、その一致をどう目指すのかは簡単なことではありません。
その意義や価値が介護保険制度という枠組みを超えて地域に認められ、地域と連携し、新し
い付加価値創出に繋げていくことが必要です。
簡単なことではありませんが、各地での取り組みの様子を知るたびに、どうにかしなければ
との使命感を持ちます。

◆最近、省庁や議員など行政側とディスカッションする機会が増えています。
その窓口が厚労省(厚生局)だったり経産省(経産局)だったり、取り組むテーマは共通な
のですが、課題認識には差があり、それに対するアプローチは大きく違います。
役割の違いと言ったらそれまでですが、一体感なき政策推進には危うさを覚えます。
どう例えたら良いのか、ディフェンス省庁とオフェンス省庁それぞれが大きな権限・予算を
もってピッチ内を走り回っていますが、ボランチ(司令塔)が不在でチームとしての戦術に
なっていない、みたいな感じでしょうか。

◆少し前に読んだ本に、人が老いること(最終的に死を迎えること)に対する日本と他国、
特にヨーロッパとの観念の違いが書かれていました。
乱暴なまとめをお許しいただきたいのですが、私が解釈したのは、

・ヨーロッパにおいて、老いは自然なプロセスであり、尊厳を持って迎えられるべきものと
いう考え方が広まっている。
そのため、高齢者に対する介護や医療サポートは、生活支援だけでなく社会参加の促進など
社会全体の維持サポートに目が向けられている。

・日本において、老いは衰えや病気の象徴として捉えられ、死は忌むべきものとして忌避さ
れる傾向がある。
そのため、高齢者に対するサポートも個人に対する介護や医療が中心であり生活支援や社会
参加の促進は十分に進んでいない。

本には延命治療に関する記述もありましたが、その受け止めや法律の違いなどは顕著ですね。
これらの違いは、それぞれの文化や宗教、歴史的背景なども影響しており、決してどちらが
良い悪いというものではないと思います。
ただ社会環境が大きく変化する中、他国や過去に学ぶべき点も多いなぁと感じた次第です。

◆人は老いる、そして身体・認知機能は低下する。
この避けられない現実を受け止め、高齢者に接する私たち事業者はどう役割を果たすべきか。
機能訓練とは、何のために何を提供し、何をもって加算や報酬を受け取っているのだろうか。
そして、それは本人が望み、また社会が望むことなのだろうか、云々。
そんなことを考えると堂々巡りに陥ります。

◆ショッピングリハビリ事業は、そんなモヤモヤを抱きながらモデル構築してきました。
老いや障がいは個人の問題であると同時に社会全体の問題であり、持続可能な地域創出のため
には地域と個人を切り離してはいけません。
地域には多数の高齢者・障がい者が事実として暮らしており、必要以上に居場所を制限されて
良いはずがありません。
自立支援や機能訓練など業界キーワードは、誰もが暮らし続けられるための街の自立に繋がっ
てこそであり、報酬や加算などテクニックのために存在していてはダメです。
これは制度自体を否定するものではなく、私たち事業者が肝に銘じることだと考えており、
より良い制度となるよう声をあげ続けていかなければとも考えています。

◆昨日の沖縄店オープンにより、ショッピングリハビリ事業は国内17拠点。
その他、自治体単位での活動も各地で複数が進行しています。
「高齢者の健康増進」だけでなく「買い物難民など地域課題解決」「地域経済への貢献」を。
10回のリハビリよりも1回のお買い物。
そして高齢者を光齢者に。
これからも挑戦を続けます!

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来年の介護報酬改定に向けて、その方針を話し合う社会保障審議会での議論が具体的かつ活発
になってきましたね。
ギリギリまで着地点は分かりませんが、何を問題視し、どう改定しようと考えているのか、
そのポイントは議事録や資料等からも読み取れます。
厚生労働省のページ内に収められていますので、直近開催分だけでもご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698.html
何年か前にもありましたが、改定期の直前になって選挙・・・高齢者施策のトーンダウン・・・
そして軟着陸・・・なんてことにならないよう願うばかりです。

みなさん、素敵な週末(三連休!)をお過ごしください!