高齢者住宅の問題点(その2)

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介護経営エナジャイザー 原田匡が日々感じたこと・考えていること、介護
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(※)エナジャイザー:エネルギー(energy)や活力を提供する人
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本メールは名刺交換、セミナー、問合せ等を通じて原田匡と接点があった
介護事業者及びその関連の方々に送信させていただいております。
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こんにちは、CB-TAG
(シー・ビータッグ)の原田匡です。

さて、昨日に続き、今日は高齢者住宅、
主にサ高住の課題について考えたいと
思います(その2です)。

先ずは、社会システムの変化に伴う、
マクロ視点におけるニーズの確認です。

今後、地域包括ケアシステムがどんどん促進
される中、社会的要請に基づき、

高齢者住宅には大きく2つの役割が求められて
くると思われます。

1つは、「在宅重視」「地域重視」という方向性の中、
中重度の要介護者が今以上に在宅・地域に溢れかえる
ことに対する対応です。

今後、そのような社会を見据え、新サービスの創出や
既存サービスの組み合わせ、医療と介護の連携等、

様々な施策を通じて在宅介護の限界点を高める事に
注力していく訳ですが、

そうは言っても、在宅で中重度の要介護者を支える
ことには自ずと限界も出てくるでしょう。

そんな中、

「在宅生活が難しくなった場合には、どうぞこの住宅に
お集まり下さい」

という役割を持った住宅があれば大変ありがたい話です。

つまり、1つ目のポイントとしては、

「主に中重度者を支える為の高齢者住宅」

というキーワードが浮かび上がってきます。

他方、今後、「施設の重点化」という方向性の
もと、

比較的軽度の要介護者で施設に入所されて
いる方々が在宅へ移行する(=施設から退所
せざるを得ない)環境が今以上に生まれてくる
かもしれません。

それらを見据え、「軽度者を含めた低所得高齢者の
住まいの確保」という問題が今、行政レベルに
おいても大きな課題の1つとして論じられている
のはご承知の通りです。

これが2つ目のポイントです。

整理すると、

今後、地域包括ケアシステムが促進される中、

マクロの視点から見て、

「中重度者が安心して入れる高齢者住宅」

「軽度者を含めた低所得層が安心して入れる住宅」

というニーズが生まれてくることは間違いのない
事実だ、ということですね。

他方、それらのポイントを見据え、

現在のサ高住のシステムは果たしてどこまで
合理性を持った仕組みになっているか?と考えて
みると、

正直、首をひねらざるを得ない部分があるのでは
ないでしょうか?

例えば、サ高住の各部屋の面積要件は、
原則25平方メートルです。

私はサ高住の詳細要件が明らかになった時、
先ず始めにこの「25平方メートル」という
数字に違和感を覚えました。
(高専賃の延長、という意味では理解出来ましたが)

というのも、上記2点のポイントと照らし合わせた
時に、この広さでは

「広すぎるのではないか?」

と感じたからです。

一概に比較できるものではないかもしれませんが、

有料老人ホームの基準は13平方メートル。

グループホーム等は7.43平方メートルですよね。

「そんな狭い部屋に押し込むなんて、高齢者の
生活を冒とくしている」

以前ある大学教授の方が上記のような趣旨の
発言をおっしゃっていましたが、

その方の発言を聞くと、

「要介護者の生活が見えていないのではないか?」

と感じてしまいます。

要介護状態の高齢者にとって、「広い部屋」と
いうのは、常に転倒等のリスクが付きまとうと
いうことと同義です。

勿論、手すりをつけたり部屋の間取り等の工夫に
よって、これらのリスクを軽減させることを事業主
としては検討するでしょうが、

それでも、これだけの広さで転倒等のリスクを
徹底的に排除しようとするのはなかなか難しいこと
だと思われます。

その意味では、要介護者にとって、サ高住の面積要件と
いうのは、かなり大きなリスクをはらんでいる、と
考える事が出来るのではないか、というのが私の私見
です。

他方、部屋が広い、ということは、それだけ住宅と
しての建築面積が大きくなるわけで、どうしても
建築コストは上がってきてしまいます。

「18平方メートルでもいい、というパターンもある
じゃないか」

というご指摘もありますが、その場合、多くの自治体
においては、

「18平方メートルでも構いませんが、原則、共用部分で
各部屋あたり最低7平方メートルは確保して下さい」

という条件がついています。
(異なる要件を設定している自治体もありますが、私の知る
限り、多くはこの数値を採用しています)

この7平方メートルの根拠は何か?と考えると、

25‐18=7、だとしか考えられません。

即ち、部屋で25平方メートルを確保するか、
部屋と共用部分で合わせて25平方メートルを確保
するか、

いずれにしても、1部屋あたり25へ右方メートル、
という数字が固定されてしまっている、というのが
現状です。

前述の通り、そうなるとどうしても物件自体が比較的
大規模にならざるを得ず、それらが建築コストに反映され、
結果、それらは住宅の賃料設定に大きく影響を及ぼすことに
なります。

となると、先ほども申し上げた通り、

「軽度者を含めた低所得者層の住まいの確保」

という点においては、サ高住をうまく適用させる
ことはなかなか難しくなってしまうのでは?と考えるのが
自然でしょう。

即ち、地域包括ケアシステムから生じる社会ニーズに
対し、今のサ高住の仕組みはおよそ合致しているとは
言えない状況にあるのです。

「いや、だから、うちの住宅は比較的元気な高齢者が
入ることを想定しているんだ」

という声もよく聞きます。

勿論、それはそれでありかもしれません。

しかし、比較的元気な高齢者、ましてや、地方都市などでは
その多くが持ち家を持っている場合において、

今直ぐに高齢者住宅に居を移さなければならない、緊急度の
高い理由(付加価値)を見出そうとすると、それはどんな
ものがあるでしょうか?

色々工夫の余地はあるでしょうが、事業として考えれば考える
だけ、困難さを感じざるを得ません。

そんなことを考えると、嫌な言い方かもしれませんが、

「まだまだサ高住は国土交通省の発想(=ハード発想)が
強いのだろうなぁ」

と私は感じてしまいます。

このあたりのチグハグさが、現状のサ高住の問題点の
1つだと私は認識しています。

今日はここまでにしたいと思いますが、

皆さんはこの点についてどう思われます
でしょうか?

明日は引き続き、異なる観点から、次なる
問題点について考えてみたいと思います。

以上、何かのお役に立てれば幸いです。

本日の私は朝は事務所で仕事。

その後、午後から京都でセミナーです。

では、今日もお互いに頑張ってまいりましょう!

今朝もお付き合いいただき、ありがとう
ございました。

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CB-TAG(シー・ビー・タッグ)
(介護経営総合研究所)

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幸せに出来る会社=「Visionary Care Company」を多数創出し、介護業界
活性化の中心的存在となる。
それが私たち「シービータッグ」のビジョンです。
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