6月下旬、イギリス議会下院において終末期の患者が死を選ぶ権利を認める法案が可決され、
法制化に向けて大きく前進したとのニュースがネット上に流れました。
目にした方もいらっしゃると思います。
既存メディアでは採り上げられたのでしょうかね??
少し考えてみたいと思います。
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■■尊厳ある死という権利
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◆この法案の内容を見てみると、余命6か月未満と診断された成人が医師2人と法律や精神
医学などの専門家からなる委員会の承認を条件に、医師が処方した薬物を服用するなどして
命を絶つことを認めるといったものです。
欧米ではいわゆる安楽死を法制化する動きが相次いでいますが、もちろん賛成の声ばかりで
はなく、社会的弱者が死を選ぶ状況に追い込まれかねないなどと懸念する声も多数あります。
ちなみにイギリス議会下院で行われた採決の結果は、賛成314、反対291だったようです。??
◆欧米において「終末期の患者には尊厳を保ったまま最期を迎える権利がある」として安楽
死を法制化する動きが広がり、フランスでも同じような法案が議会下院で可決されたことが
ニュースになりました。
そのフランスでは2022年にマクロン大統領が人生の終え方について議論するべく市民会議
の設立を発表し、年齢・居住地・学歴・職種など社会を反映するよう調整したうえ、無作為
で抽出された200人弱人の一般市民を選出し、9週間にわたって議論が続けられました。
この市民会議はネットで中継されて大きな反響を呼び、賛否様々な議論が交わされた結果、
賛成多数で積極的安楽死が支持されています。
◆その他、オランダ、ベルギー、スイスなどの国で積極的安楽死の導入が先行しています。
?とりわけスイスでは国外居住者に対しても自殺ほう助の提供が認められており、その制度は
「デス・ツーリズム」とも呼ばれます。
数年前に某有名映画監督が自らの意思でツーリズムに参加して安楽死を選択したことでも
知られ、他に自らの意思で人生を終えたい人たちが世界中からやってくると言います。
◆高齢化先進国である日本ではどうでしょうか。
2024年に行われたインターネット調査では、有効回答数500件での結果は賛成58.2%、
反対6.2%、その他(どちらとも言えないを含む)33.4%だったようです。
10年以上前の新聞社の調査結果も見つけましたが結果は同様で、「自分の生死は自分で
決めたい」という考えは日本においても少なくはありません。
でも、皆さんどうでしょう、政治家やメディアは積極的に採り上げているでしょうか。
私の知る限り、あまり聞こえてきません。
先日の参議院選挙において主張として採り上げた党がありましたが、他の主張が目立ち、
話題にはなりませんでした。
一方、自殺という形で死の自己決定権を行使する人のニュースは度々採り上げられます。
◆もちろん簡単に答えの出る問題ではなく、また気軽に議論できることではないことも
承知しています。
イギリスでの法案可決にあわせて行われたデモ参加者からは
「癌で亡くなった夫の苦しみを誰も経験しなくて済むようになり、ほっとしている。」
「問題を抱えた人に死を選択させる文化のようなものが生まれつつあることは問題だ。」
など賛否様々な声があります。
権利とは何なのか。
福祉業界に関わるものとして、また自分自身にも関わり得る問題として考え、そして議論
を交わす必要があります。
◆ちなみにイギリス下院で可決された法案は最終的に上院が可決することで法制化されま
すが、政府は施行までには4年程度かかるという見通しを示しています。
それだけ簡単ではない、時間のかかる問題なのです。
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文中でフランスにおける市民会議を紹介しました。
意見が二分するような重要な問題について政治家ではなく一般市民に徹底的に討論させる
というのは、さすが「デモクラシー発祥の国」だけのことはありますね。