[ケアビジネスSHINKA論 Vol.3014]

介護福祉士資格の価値

ここ最近、介護福祉士資格の特例措置に関するニュースが注目を集めています。
ニュース概要はと言うと、国家試験に不合格でも一定期間介護福祉士として働ける制度が導入
され、特に外国人労働者を中心に適用者が増加しているというもの。
もともと、この制度は業界の人材不足を補うために始まったとされていますが、資格の価値を
薄める可能性があるとして懸念の声も多数上がっています。
トピックとして採り上げてみたいと思います。

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■■介護福祉士資格の価値
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◆介護福祉士資格は2017年度以降、国家試験合格が必須となっています。
読者の中にも資格取得(試験合格)に向けて勉強されている方がいらっしゃるかも知れません。
この試験合格とは別に、養成施設と呼ばれる機関の卒業者に対して、たとえ試験”不合格”でも
5年間介護福祉士として登録できる特例措置が導入されています。
この措置は現状2026年度卒業者まで延長されており、2024年度までに累計8,033人が特例
措置の対象となっているようです。
そして、そのうち約5,000人が外国人留学生なのです。

◆以前に原田のメルマガでも採り上げられたと記憶していますが、介護分野において国際的な
基準を設けることが話し合われています。
各国間で介護人材の移動を円滑にし、質の高い介護サービスを提供することを目指す動きです。
日本は介護先進国として、また介護技術や倫理観が高いと多くの国から評価されている状況を
踏まえ、国際基準のモデルとしてアピールしていると言います。
そこで基準の一つとして名前が聞こえてくるのが介護福祉士という資格です。
受験された方であればお分かりの通り、福祉全般の知識や理解が問われ、決して簡単なもので
はありません。
受験資格にも別の資格取得が前提になったっり一定以上の現場経験年数が求められたり、単に
教科書で勉強するだけでは取得はできません。

◆人手不足が深刻化を増す介護業界において外国人を含めた多様な人材受け入れは必須の取り
組みであり、その中で本日採り上げた特例措置が規制や条件を部分的に緩和するものであるこ
とは理解します。
しかし多くの反対派が指摘するように、特例措置の存在そのものが資格の信頼性を損ねる可能
性があります。
実際の反対の声を拾ってみると以下のようなものがあります。
・資格の価値の低下
特例措置により試験不合格者でも資格を得られると資格の価値が薄まり、業界全体の信頼性が
低下する恐れがある。(資格取得は一部加算要件にも影響します。)
・介護の質への影響
特に外国人労働者の場合、日本語能力や専門知識の不足が問題となり介護現場でのトラブルや
サービスの質の低下につながるリスクがある。

◆ただ、こうした懸念はあるものの、それでも業界として担い手を増やすという絶対的課題が
あることも事実。
その最適解を見出すべく、民間でも多くの事業者が国内(業界外から)そして海外からの人材
募集から教育まで手掛け、業界の正しい発展に寄与するべく活動されている事例も多々。
政府任せ(その対応を批判するばかり)でなく、大切なことは、こうしたニュースをキッカケに
してでも問題意識を持つこと。
自分自身が”茹でガエル”にならないことです。

◆この特例の再延長を巡って議論が起こり始めたタイミングです。
「人材確保に欠かせない!」
「国家資格の価値を失わせる!」
皆さんはどうお感じになるでしょうか。

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また全国的に「選挙」が話題となることが増えてきましたね。
どうも政策面や候補者紹介ではないニュースが目立つのが嫌なのですが、そこはメディアに
頼るのではなく個々人が情報リテラシーを持って収集していくしかありません。
どんなに政権や法律を非難したところで、それは私たち国民が選んだ議員を通じて形作られ
たもの。
私たち自身が選択した現状と言えるのです。
もっともっと投票率が上がり、政治への関心が高まることを願うばかりです。