みなさん、おはようございます。
金曜日のメルマガ担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。
いよいよこの週末は衆議院選挙の投票日ですね。
あまりに落ち着かない政治体制に不安を感じつつ、あえて前向きに考えれば、こうして選挙
があることで飛び交う情報を目にする機会が増え、政党や議員の主張を比較し考える機会に
なります。
メディアの偏向報道にうんざりしつつも、リテラシーを高める機会でもありますかね。
そんな中、多くの政党が公約に掲げる最低賃金の引き上げについて考えてみたいと思います。
(昨日のメルマガも時給に関する話でしたね。)
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■■賃上げ政策について考える
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◆今回の衆院選では多くの政党や議員が最低賃金の引き上げを公約に掲げています。
1,500円がスタンダードのように扱われていますが、この金額は現状の1.4倍以上という高い
ハードル。
どのように引き上げを実現するのでしょうか。
某党は公約の中で「適切な価格転嫁による賃金の底上げ」と主張していますが具体的な説明
が見えず、現実的な方策がいまいち分かりません。
私だけでしょうか。
◆経済界の反応も様々です。
今月18日の記者会見において経済同友会の新浪剛史代表幹事は「1,500円を払えない経営者
は失格ということだ」と厳しく指摘したことが話題となりました。
ちなみに経済同友会は3年以内の1,500円達成を提言しています。
これに対して、中小企業が会員の大半を占める日本商工会議所の小林健会頭は「最低賃金を
引き上げていくという方向に異論はない」としつつ、「一番の問題になる(中小の)支払い
能力を検討してほしい」と慎重な姿勢を示しています。
労使それぞれの立場によって受け止め方は変わるでしょうが、そう単純な問題でないことは
確かです。
◆ところで他国ではどうなのでしょう。
思い切った賃上げに踏み切った事例としてアメリカを見ると、連邦政府の最低賃金が長年変
わらない中、カリフォルニア州をはじめ多くの州や都市が独自に最低賃金を引き上げました。
経済が厳しい時期にもかかわらず。
結果として、特にテクノロジー企業が集中する地域では企業の業績向上に寄与し、また消費
が促進されて経済全体が活性化したと言われています。
◆別のアプローチ例(労使協議による賃金調整)としてドイツを見てみます。
ドイツでは労使協議が重視されており、業種ごとの賃金協定が存在します。
少し前に最低賃金制度も導入されましたが実質的には業種ごとの賃金設定が主流のようです。
そして2008年の金融危機後は労働組合と企業が協力し、賃金を抑制する方針で合意した一方
で労働時間の短縮や労働者の福利厚生を強化しました。
これにより、企業が雇用を維持しつつ経済の回復を図ることができたと評されています。
◆またスウェーデンでも労使交渉を通じて賃金が決定される仕組みが確立されています。
政府が最低賃金を設定するのではなく業界ごとの協定によって賃金が決まるため、生産性や
地域の特性に応じた柔軟な対応が可能です。
ドイツと同じく経済危機時において業界ごとの労使交渉を重視するようになり、賃金の柔軟
性を確保することで合意し、業種ごとの協定によって賃金調整するなど企業の生産性や地域
の経済状況に応じた賃金が設定されました。
この結果、企業は競争力を保ちながら労働者の生活水準を維持できたと評されています。
◆国によって事情は様々ですし「他国は素晴らしい」とか「日本は遅れている」などという
議論はナンセンスでしょう。
例えば日本とアメリカの労働市場を比べても、日本では年功序列がいまだ根強く残っており
労働者が企業に依存する傾向がある一方、アメリカでは成果主義が主流となり労働者が自ら
のスキルを磨くことが求められているなど賃金体系や労働者の意識、また企業の役割におい
て違いがあります。
このような背景事情を考えれば日本においても労働者が自己成長やスキルアップに取り組む
姿勢を促進することとセットでなければ、単純に賃上げを比較したり論じたりはできません。
リスクも努力もなしに、簡単にリターンは得られません。
◆政治の観点で言えば、最終的な目標は経済を含めた“国力”を高めることであるはず。
そのための重要なファクターとして企業活動があり、そして労使(関係)があります。
この幹となる部分の議論や主張、また私たちの理解がないままに賃上げ議論だけが独り歩き
する、そしてメディアの部分的な採り上げが続くのは、結局は誰の得にもならないはず。
何のための賃上げ議論なのか、選挙という機会で改めて一人ひとりが考えてみませんか。
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~妄想です~
社会保険制度維持や防衛強化のために税収増が不可欠。
賃上げを実現すれば個人からの税や社会保険料の徴収が増加する。
大企業には人材が集まり、より収益力も増して法人税収が増加する。
一方でもともと収益力のない(法人税が見込めない)企業は淘汰する。
そんなシナリオを与野党が泥仕合をしながら粛々と進めている・・・考えすぎですかね。
福祉業界における賃上げ議論については、また別の機会に。