[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2740]

アウトカム評価

みなさん、おはようございます。
金曜日のメルマガ担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。

年度末になってようやく、報酬改定の詳細が発表されましたね。
一通り概略を確認し、重要そうな項目を深堀していますが・・・ボリューム多いです。。
大きな変更点は見送られたとはいえ、(悪い意味で)巧みな見直しがなされています。
本日は報酬改定の説明にも登場し、今後のキーワードとなりそうな言葉を採り上げます。
その言葉とは「アウトカム」です。

それでは本日のメルマガです。
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■■アウトカム評価
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◆今回の報酬改定におけるポイントの一つに「アウトカム評価の強化」があります。
前回の介護報酬改定でも取り上げられたので、その意味や概要はご存じのことと思います。
ただ今回は“強化”とありますから単に取り組んでいるだけではダメで、その取り組み内容
が問われるものとなっています。

◆アウトカム評価とは、アメリカの学者が提唱した3つの評価視点のうちのひとつです。
介護報酬において、その3つの視点は以下のように位置づけられています。

『ストラクチャー』
構造やサービス提供に必要となる人員配置・体制への評価視点
『プロセス』
過程やサービス内容(計画書の作成、機能訓練の実施等)など現場への評価視点
『アウトカム』
結果やサービスによりもたらされた利用者の状態変化など対象者への評価視点

◆上記内容から介護における「アウトカム」とは、介護サービスを利用した結果、利用者が
どのような状態になったのか、ということです。
これまで「とりあえずやっている」ことへの評価から「状態の改善という成果を出す」こと
への評価へ。
今回の報酬改定の変更点の多くも、その観点に沿っています。
事業者に求められる“当たり前の基準”が高くなっていきます。

◆アウトカム評価については、これまでにも「自立支援や重度化防止に係る取組への評価が
不十分」「介護報酬の要介護度への偏りが大きい」など提言がなされてきました。
現在の介護保険法は、要介護度が進むにつれて報酬が高くなる制度になっています。
例えば、要介護3以上の重度認定者の基本報酬は要支援者の3倍以上。
それに対して労働投入時間にそこまで差があるかと言えば、ありません。
しかも加算の中には「要介護3以上の割合が○割以上」なんてものもあり、基本報酬や加算
の取得を目的とした囲い込みが起きやすい状況にあります。

◆もともと介護保険法において要介護者の自立支援は主題として掲げられており、だからこ
そ自立度や要介護度の維持・改善などアウトカム指標を重視した制度設計とすることが求め
られます。
これまで機能訓練など懸命に取り組んでこられた事業者にとって今回の報酬改定は必ずしも
満足できる内容ではなかったかも知れませんが、時期改定に向けて間違いなくその取り組み
は評価されるようになりますし、そう信じています。

◆最後に、アウトカムで懸念されるのは善意・悪意を問わず「不正」です。
評価手法に妥当性があるとはいえ、それが「介護報酬・基準に絡んでくる」となれば「測定
や評価に際して恣意的な要素が絡まないか(事業主の指示で指標が高得点になるような操作
が行われないか)」など考えてしまいます。
厚労省としては「不正があれば利用者や家族、現場従事者の告発等で判明する」と考えてい
るような向きもありますが、ここは性善説ではない考えももって、正しく運用されるような
仕組みが必要かと思います。
指標による評価となれば、それ自体が新たな業務負担を生みかねませんし、何よりきちんと
取り組む事業者に正当な“評価”がなされることを願ってやみません。

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似たような言葉に「アウトプット」がありますが、同じようで別物です。
一言でいえば“主語”が違う。
アウトプットは自分が出したもので、レポートやプレゼン資料が代表例。
それに対してアウトカムは他者(顧客)が出したもので、実際に起こった変化など。
だからこそ、そこには主観ではなく客観的な基準やルールが必要なのです。
業界の大きな課題ですね。

今週もお疲れ様でした。
ステキな週末をお過ごしください!