[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2690]

同じ過ちを繰り返さないために

みなさん、おはようございます。
ケアビジネスパートナーズの尾添です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年は年初より大きな災害や事故が続きました。
元日に北陸を襲った震災は、現在でも行方不明者の捜索活動が続き、また多くの方が不自由な
生活を強いられています。
今週の原田代表のメルマガを読みながら、改めて自分事として考えさせられます。

そして2日には、羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機同士が衝突し、海上保安庁の搭乗
者のうち5人が亡くなるという痛ましい事故が起こり、メディアで繰り返し流されました。
一方で、日本航空機では乗客乗員379人全員が、一部負傷者はありながら全員脱出したことも
繰り返し伝えられました。
現時点で、まだ詳しい原因等は調査中とされています。
犠牲者が出た事故であり、このような場で取り上げること自体が不謹慎と言われるかもしれま
せんが、それでも、受けたショックをそのままにするのではなく自分事として頭に刻みたい。
ただ悲しみに暮れるのではなく、何を教訓とし、次にどう繋げるべきなのか。
そんな想いから、本日のメルマガを書きたいと思います。

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■■同じ過ちを繰り返さないために
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◆かつて『失敗の科学』というタイトルの本を読んだことを思い出しました。
この本の中で航空業界について、そして比較する形で医療業界について触れられています。
今回の羽田での事故のように、航空の現場では一度の事故で大きな被害や犠牲者が出ること
もあり、失敗は絶対に許されることではありません。
そのような状況において、それでも起こり得る失敗(過ち、事故)に対して、業界は、そし
て関わる人たちはどのように考えて行動しているのか、その本で紹介されています。

◆航空業界では、失敗と誠実に向き合い、そこから学ぶ文化が根付いていると言います。
独立した強い権限を持つ調査機関が存在しており、飛行データやコックピットの音声録音を
分析し、最終的に事故が起こった原因を突き止めて全ての航空会社に共有して、2度と同じ
ことが起こらないよう業界全体が受け止め、そして各社が行動に移します。
こうした業界全体の取り組みにより、過去に比べて事故の発生件数や率は飛躍的に改善して
います。
「失敗を活かすために正確なデータ収集・把握が重要」
「失敗の原因は人ではなく仕組みにあると考える」
「2度と同じ失敗を繰り返さないよう、仕組みやマニュアル、そして環境について見直す」
これらの考えが業界全体で共有され、徹底されています。

◆一方の医療業界について、どのように比較され、書かれているでしょうか。
医療業界では内部調査が行われないことが多いとされ、事故を報告しない、そもそも事故だ
と認識しないという体質があり、そのような事例が多数存在しているとされています。
医療のように外部から分かりにくい密室でのこととなると、そもそも失敗・事故なのかどう
かも分からず、そのまま闇に葬られると私たちは事実を知ることすらできません。
仮に説明を受けたとしても、テクニカルエラーで・・・合併症が・・・予測できない結果だった・・・
など婉曲表現が使われると、いったい何が真実なのか分からなくなります。
もちろん医療側を非難するようなケースばかりではないでしょうし、しっかり対策を講じて
いる病院もあることは申し添えます。
ただ、それが業界全体の取り組みにはなっていません。

◆恐ろしいのは、失敗を隠せば隠すほど、その本人や病院が進歩しないばかりか、別の場所
で同じ失敗・事故・不幸が繰り返される悲劇に繋がり得ることです。

◆これは決して医療業界に限ったことではなく、福祉業界にも言えることです。
そして、他人事ではなく、自分事なのです。
規模の大小や事業種別に関わらず、私たちは命や健康に触れる現場にいるのですから。

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「宝島」や「ジキル氏とハイド氏」など有名作品を世に残したロバート・ルイス・スティー
ヴンソンというイギリスの小説家は、次のような言葉を残しています。
『失敗とは、失敗を失敗と認めないこと』

最後になりましたが、この度の事故で犠牲になられた方々、そのご遺族の方々に、心よりの
お悔やみを申し上げます。
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました。