[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2684]

異なる過去、同じ未来②

みなさん、おはようございます。
ケアビジネスパートナーズの尾添です。

先週の少子化に続いて、今回は韓国の高齢化に関する課題、そしてその課題に対して行政や
民間がどのように取り組んでいるのかについて、出張で実際に目や耳にしてきた内容をお伝
えできればと思います。
韓国では日本を上回るスピードで高齢化が進行しており、2045年には日本の高齢化率を上
回り、このまま少子化が進むと2065年には高齢化率48.8%という、人口の半分が高齢者と
いう未来が予測されています。
ただ単に高齢者が多いことだけでなく、その社会を支えるための年金を含めた社会保障制度
の整備が遅れており、高齢者の貧困率など様々な問題も顕在化しています。

実際の現場で目にしたのは!?
それでは本日のメルマガです!

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■■異なる過去、同じ未来②
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◆前段に書いた内容が、出張前の調査概要です。
事実についてはそのままなのですが、実際の現地で目にしたのは、その課題に官民が一体と
なって取り組む前向きな姿でした。
限られた時間の中で良い側面しか見ていないのかも知れませんが、それでも「日本でも取り
組みたい」と思えるものもありました。
韓国では、いわゆる介護保険における保険者は市町村ではなく、国の専門機関です。
市町村の役割は、とにかくサポートを必要とする住民をきちんと把握し、誰もが住みよいと
思える街を維持し続けること。

◆今回訪問した街の一つに、龍仁市という人口100万人の中核都市がありました。
同市は首都ソウルの南約40キロに位置し、高速道路の開通によりソウルのベッドタウンとし
て近年人口が急増しています。
国内でも比較的裕福な自治体とのこと、同市では高齢者福祉課の課長をはじめ複数の役所の
方とお会いできました。
市全体の高齢化率は15%前後ですが郊外には30%を超えるエリアも抱えており、行政として
危機感を持っているとのこと。
国が整備する社会保障制度に加えて同市が導入しているのが、今回の出張目的の一つであった
龍仁市が導入している『高齢者見守りシステム』です。
特に独居など普段の生活において見守る人がいない高齢者を対象に、生活状況を遠隔で管理
し、Aiチャットボットが生活リズムの維持・向上を手助けするというもの。
同市がシステムの利用料を負担し、希望するすべての高齢者のスマートフォンにアプリとして
インストールし、稼働させています。
今回は市役所やシステム会社のご好意でお二人の利用者(高齢者)宅にもお邪魔し、実際の
利用状況を目にし、また利用者の声を聴く機会にも恵まれました。
86歳の男性、78歳の女性、お二人とも「システムのおかげで一人でも安心して暮らせる」と
仰っていました。
そのシステムからの声掛けにより生活リズムを保ち、Aiと会話をしたり、動画を視聴したり、
ショッピングを楽しんだり。
様々な趣味に関する学習コンテンツも豊富で、ノートにびっしりと書き込まれた学習の記録を
目にし、そこには決して独居高齢者=不幸という姿は見えませんでした。
Aiチャットボットはスンニという女の子がキャラクターなのですが、皆さん「スンニがいて
くれて安心だし、寂しくない」のだと。

◆そして龍仁市では、このシステムに『人』が組み合わさるのです。
韓国では日本で言うところの要支援者には介護保険制度は適用されず、代わりに国から給与
をもらって地域の高齢者を支えるサポーターが存在します。
1人が10~16人の高齢者を担当し、日ごろから顔を出したり簡単なサポートをしたり。
そして先述のシステムを自分のスマホと繋げることで異常を直ぐに発見し、対応しています。
このサポーターは担当人数によって最高10万円前後の報酬を国から支給されており、そして
毎年更新で、その更新には担当する高齢者や自治体の評価が反映され、低評価(サポートが
不十分)と判断される場合は強制的に交代させられます。
だから皆さんしっかりサポートするようで、結果として地域の高齢者も安心して自宅で過ご
すことができるのだと。

◆また同システムは高齢者にもインセンティブを促します。
GPSにより外出を把握し、例えば今週の課題として近くの公園まで出かけたらポイント付与
など、出かけるキッカケを提供します。
他にスマホの機能を利用したらポイント付与などもあり、気がついたらスマホやシステムを
問題なく活用できているのです。
これらの基盤となるのが、龍仁市の65歳以上の90%以上がスマホを使っているという環境。
自宅だけでなく役所でもデジタル活用が進んでおり、あらゆる書面(住民票など何十種類)が
マイナンバーと指紋認証だけで専用機械から出力可能。
高齢者も行政手続きのため市内に多数ある役所へ出かけ、有人窓口ではなく機械で操作して、
用を終えます。

◆以上、2週にかけて韓国出張の報告でした。
どうしても隣の芝生は青く見えるものですが。。
それでも、相互に学ぶべき点が多いなぁと感じる時間を過ごしました。
まだまだ書き足りないことだらけですが、またの機会にぜひ。
これからも隣の芝生からの情報収集を続けてみたいと思います。

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本日のメルマガが今年最後となります。
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