[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2617]

不作為の罪

みなさん、おはようございます。
毎週金曜日の担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。

ジャニーズ事務所をめぐるニュースを連日のように目や耳にします。
数ヶ月前、この事件が世間に知れ始めた時にはほとんど取り上げることの無かったメディア
が、堰を切ったように一斉に報道そして解説するようになりましたね。
そんな一連のニュースを目にして気になったことを書いてみます。

それでは本日のメルマガです!

──────────────────────────────
■■
■■不作為の罪
■■
──────────────────────────────
◆ジャニーズ騒動が収まる気配がありません。
被害を証言する方が次々と声を上げ、その被害者は数百人規模になると言われています。
日本のメディアよりも先にイギリスのBBCで大きく報道され、そして遂には国連機関にまで届
く事態になりました。
性的行為を目的として子供(少年)と親密な関係を結ぼうとし、加害者が被害者に性的虐待に
同意するよう強要し、そして逮捕される危険を減らすため声を上げにくい状況を作りあげる。
それがグルーミングと呼ばれる卑劣かつ恐ろしい行為であったということを、報道を通じて多
くの人が知りました。

◆事件が表面化して以降、ジャニーズ社の対応がバッシングを受け続けています。
特に初動において責任逃れと思われるような言動があり、そのうちの一つが「第三者委員会を
設置することは考えない」という経営陣からの発表です。
結局、世間のバッシングを受けてか10日ほど経ってから「有識者による再発防止特別チーム
を設置します」と発表がなされました。
事実調査ではなく再発防止か・・・とチーム名に多くの人がそう感じたのではないでしょうか。
ただ、このチーム(代表は元検事の有名な弁護士)の会見では突っ込んだ報告がなされ、その
なかで気になったのが本日のテーマにもある“不作為”という言葉です。
「一番の罪は、ジャニー氏の異常な性的思考・行動」
こう指摘したうえで、加えてチーム代表が口にしたのが
「共同経営者であったメリー氏の徹底した隠ぺい行為」、そして「事務所としての不作為」と
いう言葉だったのです。

◆犯罪は作為犯と不作為犯に分けられ、作為とは積極的動作を指し、不作為とは消極的動作を
指します。
分かりやすく言えば、不作為とは見て見ぬふりをして何もしないこと。
そうです、ジャニーズ社は犯罪の事実を知りながら組織的に“何もしなかった”のです。
その不作為に関与していたであろう人が株主として残り、経営陣として入閣する。
そういった事実が違和感として私たちの胸に残るのではないでしょうか。

◆日本の法律では、残念ながら犯罪行為を見て見ぬふりをしたことだけでは(一般には)罪に
は問われません。
犯罪者を手助けする行為があった場合には、幇助(ほうじょ)犯という罪が適用されることは
良く知られているかと思います。
見て見ぬふりをする不作為だけで、幇助行為や幇助の意思がないと見做されると、それは法的
な罪には問われないのです。

法的には。

◆ジャニーズ事件だけでなくビッグモーターを皮切りにした中古車業界の事件、その他政財界
で起こる様々な事件においても“知っていたにもかかわらず見て見ぬふりをした”不作為の罪
の重さを感じることが多いです。
そして、これは決して他山の石にしてはいけません。
事件の大小ではなく、そして私たちの業界にも決して無関係ではないのですから。
「虐待の現場を目撃していながら・・・」
「仲間の行為がルール違反だと知っていながら・・・」

◆不作為とは、自分だけでなく他者(仲間)に対する責任や義務を果たさないこと。
組織作りにおいて、今後のキーワードになるかも知れませんね。
そういった観点をもって、私たちは日ごろのニュースから学んでいかなければいけません。

──────────────────────────────
重苦しい内容になってしまい申し訳ないです。
時事問題を扱うのは緊張しますが、決して単なる非難ではなく、そこから私たちが何を感じ、
そして学びに出来るのか。
そんなことを思いながら、これからも取り上げていきたいと思います。

みなさん今週もお疲れさまでした。
素敵な週末をお過ごしください!!