開設初日の思い出(その2)

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介護経営エナジャイザー 原田匡が日々感じたこと・考えていること、介護
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(※)エナジャイザー:エネルギー(energy)や活力を提供する人
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本メールは名刺交換、セミナー、問合せ等を通じて原田匡と接点があった
介護事業者及びその関連の方々に送信させていただいております。
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おはようございます、CB-TAG
(シー・ビータッグ)の原田匡です。

さて、昨日は、京子さんとの出会い、

そして、

“目を疑いたくなるほどの驚きの光景が、
私の目の前に飛び込んできた”

ところまでのエピソードをご紹介させて
いただきました。

では、引き続き、文章をお読み下さいませ。

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(前文略)
そして、事業所まで後1分で到着、というところまで
近づいたとき。

目を疑いたくなるほどの驚きの光景が、私の目の前に
飛び込んできたのです。

何と、先ほどまで事業所の中にいた京子さんが、

泣き叫びながら、靴も履かずに、しかも、もの凄い
スピードで道路を走っているのです。

そして、その後ろを、私たちのスタッフが同じく
猛ダッシュで追いかけていきます。

「一体何があったの?」

ビックリした私は、事業所に着くなり、中にいる
スタッフに尋ねました。

すると、

「もの凄い力でスタッフを突き飛ばし、外へ出て行って
しまったんです。」

との返事。

そんな折、追いかけているスタッフから事業所に
連絡が入ります。

「後ろから追いかけていることに気がつくと、
もの凄いスピードで走って逃げようとするんです。

甲州街道(私たちの事業所の近くを走る大通りです)の
信号も無視しようとしますし、危なくてしょうがありません。

私の体力ではとても無理です。誰か代ってもらえませんか?」

その言葉を聞き、他のスタッフは、

「どうしよう、、、」

「あんな状況じゃ、京子さんは、うちでは対応が難しいよね、、、」

などと不安そうに話をしています。

正直なことを言うと、私自身も同じような想いが頭を
よぎっていました。

しかし、こんな状況下で、代表である私が二度も続けて
逃げるわけにはいきません。

しかも開設初日です。

「分かった、俺が代わる。何とか頑張ってみるから、
皆は京子さん以外の人のケアをお願いするよ。

とりあえず、今、どこにいるのか教えてくれ。」

と事業所内にいるスタッフに話し、その後、直ぐに
外のスタッフに連絡を取り、交代しました。

それから私は、先ほどまでのスタッフと同様、京子さん
の後ろを追いかることになりました。

スタッフから聞いた通りです。

私が後ろから追いかけていることに気付くと、京子さんは、

「着いてくるな、バカヤロー!」

と大声で叫び、赤信号をもものともせず、猛スピードで
走っていってしまいます。

そのため、私は、京子さんに気付かれないように、

電信柱や物陰に隠れながら、着かず離れずの距離を保ち、
ひたすら後を追いかけていました。

「もし京子さんが事故に遭ったりしたらどうしよう?」

「マスコミに“素人介護事業所で事故”なんて記事で
叩かれちゃうのかな。。。。」

冗談でなく、本当にそんな記事が頭をよぎり、思わずゾッと
する自分がいます。

そのような状態がずっと続き、ふと気がつくと、交代して
から既に約3時間が経過していました。

事業所にいるスタッフからも、心配の電話が何度も入ってきます。

「これ以上、後を追いかけまわしていても埒(らち)が
明かないし、京子さんだって体調を崩してしまう」

そう思った私は、この状況を強引にでも収束させてしまおう、
と考え、

後ろから京子さんに走り寄り、抵抗されるのを承知の上で、
オリジン弁当の自動ドアの真ん前で、京子さんの身体に
抱きついたのです。

「ギャー!」「助けてー!」

悲鳴にも似た大声を上げ、京子さんは大暴れします。

オリジン弁当や、目の前のセブンイレブンから出てくる人たちは、

「何が起こったんだ?」

とビックリした顔で振り返っています。

でも、そんなことに構っていられません。

私は、とにかく、この事態を収めようと必死になりました。

しかし、京子さんの興奮は収まるどころか、ますます
高ぶるばかりです。

何とか逃げ出そうと必死だったのでしょう、

私はもの凄い力で顔面を殴られ、足を蹴られ、
手のひらや腕に爪を立てられ、すさまじい抵抗を受けました。

一方、私は、そんな抵抗に我慢しながらも、

「京子さん、お願いだから落ち着いて!」
「静かになって!」

祈るような気持ちを込めて、京子さんを強く抱きしめ
続けていました。

そして、そんな状態が5分ほど続いたでしょうか、

京子さんの抵抗が徐々に弱まり始めてきました。

でも、決して落ち着かれたわけではありません。

その証拠として、すすり泣きと共に、

「お父さん、、、」
「怖いよ、、、」
「助けて、、、」

というか細い声だけが私に聞こえてくるようになりました。

その声を聞きながら、私は、自分自身に情けなさを感じていました。

「俺は何をやってるんだ。よく考えたら、京子さんが
こんなふうになるのは当たり前だよな。

大好きなお父さんといきなり離され、訳の分からないところに
連れてこられ、

やっとの思いでそこから逃げ出してきたら、今度は
こんな見ず知らずのごつい男に追いかけられ、

あげくの果てに後ろからおさえられて自由を奪われて、、、

京子さんにしたら、怖くてしょうがないのは当たり前
だよな。

でも、このまま外で走り回り続けていたって、京子さんにも
いいはずはないし、、、

一体どうしたらいいんだろう?

何故、俺にはどうすることも出来ないんだろう?

こんな思いをしてもらうために、俺は貯金をはたいて
デイサービスを始めたわけじゃないぞ。

皆に喜んでもらえて、社会にも役立ち、おまけに利益も上がる
素晴らしい事業だと思ったから始めたのに。。。。」

そんな思いが溢れ出し、恥ずかしい話、私自身、涙が止まらなく
なってしまいました。

そして、京子さんと私は、道路の真ん中で抱き合いながら、
二人でおいおい泣き続けてしまったのです。

しかし、そんな時、京子さんの態度に大きな一つの変化が
起こりました。

泣いている私の顔をジッと見ながら、京子さんが
(泣きながら)頷き始めたのです。

その京子さんの姿を見た私は、よく分からないまま、
つられて頷きました。

すると、そんな私を見て、京子さんは私に話しかけてきました。

「あんた、何で泣いてるの?」

「いや、このままじゃ京子さんが身体を壊しちゃうと思って、
何とか止めたいと思って後ろから押さえ込んだんだけど、

よく考えたら、京子さんにとって、こんなに怖いことって
ないよね。

だって、大好きなお父さんから離されて、いきなり知らない
ところに連れて来られて、

やっとの思いでそこから逃げ出したのに、

今度はこんな見ず知らずの男に押さえつけられて、動く自由
まで奪われて、、、、

そんなことを考えていたら俺も悲しくなっちゃって。

でも、このまま外にいたら、京子さん、風邪ひいちゃう
だろうし。

俺、もう、どうしたらいいか分からないよ。ごめんね。。。。」

そう言いながら私はまたもや泣いてしまい、

「本当にごめん」

と言って京子さんに再度、抱きついてしまいました。

するとその時です。

驚いたことに、京子さんの態度がいきなり変わりました。

私の頭を撫でながら、

「泣くんじゃない、泣くんじゃない」

と、まるで赤ん坊をあやすかのように、私を抱きしめて
くれたのです。

そして、

「あんた、いい大人がギャーギャー街の真ん中で
泣いてるんじゃないよ。格好悪いじゃない。」

と言って、笑いながら私の涙(と鼻水)を一生懸命
素手で拭いてくれました。

「泣くなって、、、京子さんのせいじゃないか!」

心の中でそんな突っ込みを入れつつも、

私は京子さんのいきなりの変化に驚いていました。

「京子さんはもう平気なの?」

「私?私はもう平気よ。それよりあんたよ!男なんだから、
泣くのを止めてシャキッとしなさい」

そう言われた私は、混乱する気持ちを抑えながら、
京子さんに尋ねました。

「分かった。じゃぁ、京子さん、さっきの場所まで一緒に
帰ってくれる?」

京子さんは、しばらく間を置いてから、ウン、と頷き、
私の手を握り、並んで一緒に歩きだしてくれました。

こうして、京子さんは、私に対して心を開き、落ち着きを
取り戻し、一瞬にして、普段の明るい京子さんにもどられた
のです。。。。。。。。。。

長々とお話してしまい、本当に申し訳ございませんでした。

その後、一件落着、とはいかず、京子さんとはまだまだ
いろいろと続くことになるのですが、

お話は、一旦ここで終わりにさせていただきます。

私は、よくある代表の(お固い)ご挨拶ではなく、
私が経験したこの出来事を、どうしても皆様にメッセージと
してお伝えしたいと思いました。

何故なら、この出来事から得た気付きこそが、

今の私たちの事業所の根幹を貫く価値観になっている
からなのです。

大声を上げて暴れる京子さんを初めて見た時、

私たちスタッフは一様に焦り、

「早く収めなければまずい」
「他の利用者に迷惑がかかる」

という思いばかりが先行していました。

でも、言い換えると、その時の私たちは、京子さんの

「心」

ではなく、

「行動」

だけを見ていたのではないか、と思うのです。

別の言い方をすると、京子さんに対して

「落ち着いて欲しい」

という私たちの一方的な思いばかりを押し付けてしまい、
肝心の京子さんの気持ちが後回しになっていたのです。

自分に対するあまりの情けなさに涙が溢れ出た時を境に、
京子さんは、徐々に、穏やかで明るい、本来の姿に戻って
いかれました。

それは、京子さんの「行動」だけではなく、「心」を見つめる
ことができたからなのだ、と私は理解しています。

「安心」「信頼」の関係を土台とし、一人ひとりの利用者が、
命の灯が消える最期の時までその方らしく、元気に暮らせる
ことが出来るようにサポートさせていただきたいー

それが私たちスタッフ全員の想いであり、社会における
存在意義だと思っています。

まだまだ未熟な部分も多い私たちですが、これからも、

「安心」「信頼」の関係を基礎に、少しでも皆様のお役に
立てるように頑張ってまいります。

今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
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本当に正直な事を言うと、この事件が起こった3月1日の夜、

私の心の中には、介護という仕事に対し、

「これは大変な業界に足を突っ込んでしまった」

という思いと(苦笑)、

「(人間同士、建前でなく本音でぶつかりあう仕事、
という意味で)なんて面白い仕事なんだ。」

という、全く異なる2つの思いが交錯していました。

また、私に介護の仕事を教えてくれた方にこの日の
出来事を報告したところ、

彼は笑いながら、こんなヒントをくれました。

「原田さん、介護、介護って皆、言葉に出して言うけど、
実はそんなに小難しい話じゃないんですよ。要は、人間
同士の信頼関係なんですから。」

果たして今のうちの事業所は、いや、自分は、
この原点を忘れずに仕事に取り組めているのだろうか?

思わず自問自答し、ふと考えた、でも、とても大切な
一時でした。

皆さんは、創業時の想い、原点を忘れずに経営
出来ていますか?

一度、振り返ってみてもいいかもしれませんね。

以上、何かのお役に立てれば幸いです。

今日は大阪のオフィスで終日打合せ。

その後、東京の自宅へ戻ります。

皆さんは、今日はどんな1日を過ごされるので
しょうか?

充実した1日を過ごせるよう、今日もお互い
頑張ってまいりましょう!

今朝もお付き合いいただき、ありがとう
ございました。


来週1週間はお盆休みをいただくため、本メルマガ
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しっかり充電し、パワーアップした状態で、引き続き、
再来週より皆様に様々な情報・雑感をお届けして
まいりますので、何卒今後とも宜しくお願い致します!
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社会貢献と利益創出の両立に真剣で、成長・進化を目指す介護事業者に、
業界特性を踏まえた有益な経営情報の発信、及びツールの開発・提供を
行う。その結果、「地域で最も愛され、必要とされ、関わる全ての人々を
幸せに出来る会社=「Visionary Care Company」を多数創出し、介護業界
活性化の中心的存在となる。
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