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介護経営エナジャイザー 原田匡が日々感じたこと・考えていること、介護
経営に役立つ情報等をお届けします!
(※)エナジャイザー:エネルギー(energy)や活力を提供する人
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本メールは名刺交換、セミナー、問合せ等を通じて原田匡と接点があった
介護事業者及びその関連の方々に送信させていただいております。
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おはようございます、CB-TAG
(シー・ビータッグ)の原田匡です。
本日は、昨日の続きです。
「もう、これ以上、在宅介護は無理かな・・・」
と諦めかける瞬間がたびたび訪れるように
なってきた敬子さん。
では、どうぞ、続きをお読み下さい。
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【見出しその1:葛藤との戦い】
アルツハイマーの症状が進み、
だんだんと食べられる量が減ってくると
体重も落ちてきます。
触れると背骨の感触がわかるほど細く
なってしまった敬子さんに歩いていただく
ことが
“怖い”
と感じるあまり、
敬子さんの靴下が床を滑るのに任せて、
体を支えたままスタッフだけが歩く、
そんな介助になってしまうこともありました。
でも、これでは、敬子さんが歩いている
ことになりません。
ベテランスタッフからは、厳しい声が飛びます。
「それは、歩いてないからね。
何度も言うけれど、敬子さんは分かって
いるんだから。
疲れたら途中で休んでもいいから、
ちゃんと、右、左と体重移動させて」
ケアマネージャーさんもこの様子を見て、
幾度となく相談をされてきます。
「もう、車イスにした方がいいでしょうか・・・」
「いえ、うちでは歩いていただきますから!」
「歩く」ためには体重移動だけではなく、
踵がきちんと床に着くことも大切です。
しかし血行が悪くなり、足裏の筋が硬く縮んで
しまうと踵が床に着地せず、
つま先だけで歩いてしまうようになります。
その状態が続くと、歩くことができなくなって
しまうのです。
敬子さんの足先が紫色になるほど冷え切り、
つま先だけで歩いていることに気付いた日
からは、
毎日足浴で足を温めながらマッサージを行い
ました。
アロマオイルでゆっくりと筋を伸ばすように
マッサージすると、
その後の足運びもよくなられました。
敬子さんの自力での歩行や食事を目指す。
その一方でスタッフは、つねに葛藤との戦いでした。
「敬子さん、ほんとうに痩せてきちゃったよね。
これ以上歩かせるのは、かえって危ないんじゃ
ないだろうか」
「自分の手で食べることが大切だと分かっていても、
食べる量が少なくなって体力がなくなってしまう
のは嫌だ・・・」
食事のたびに、口元で料理を落としてしまう姿を
隣で見守りながら、
そんな思いにかられます。
「食べ物を落とされてしまうことは、お気の毒かな。
介助することでたくさん食べていただけるかな」
敬子さんの持つ力をギリギリまで引き出すことと、
敬子さんをもっと介助したい気持ちとの狭間で、
いつもスタッフは揺れ動いていました。
食事が進まない、毎日のように口ずさんでいた
童謡を歌われない、歩けない日が続く・・・、
そのたびに、由美さんも何度も何度も自問自答を
繰り返していました。
「もう、在宅介護は諦めようか・・・」
ついに由美さんは、申し込んでいた特別養護老人
ホームへの入所を決められます。
しかし、数日後。
「やはり母が通えるうちは、こちらでお世話に
なります! 施設に預けのはやめることにしました」
と、きっぱりおっしゃる由美さんの姿がありました。
食べたいものを、自分で食べる。
動ける間は、自分の足で歩く。
ここに通い、家族のもとへ帰る。
敬子さんにとって、
“生きる”
ことそのもの。
ここならそれができる。
“ここに通いながら、在宅介護を続ける”
という由美さんの決意に応えようと、
スタッフもさらにできることを工夫していきます。
痩せて、入れ歯が合わなくなってきたときには、
おかずやお味噌汁の実を刻んでお出しすると、
ゆっくりですが、入れ歯がなくても食べて
いただくことができました。
「今日ね、敬子さんが久しぶりに
“おいしいねぇ”
って言ってくれたの~!」
敬子さんの
“ありがとう”
の一言が、スタッフの喜びになり、
力になります。
夏は、水分不足になっていないか、
栄養が足りているか、
特に細心の注意を払いながら食事に
付き添いました。
「敬子さん、これ、好きだよね」
「こう調理すれば、食べやすいんじゃない?」
敬子さんの好物を並べ、最終的に完全食事介助に
なるまでは、
たとえ手づかみになってしまっても、
敬子さんの
「自分で食べたい」
気持ちを優先していきました。
食べたい気持ちは、生きようとする
気持ちの表れだからです。
シフトでスタッフが交替しなければ
ならないときには、
“今日の敬子さんは、ここまで食べています”
“少し、水分摂取が足りていません”
などの申し送りをしました。
「食べこぼしが多いときは、その分、ちゃんと
盛り付ける量を増やしてね」
「お仕事やご家族のお世話で由美さんは
お忙しいはず。
せめて敬子さんがここに来ているときには、
たくさん召し上がっていただこう」
そんなふうにスタッフで話をしながら、
連携をとりました。
心配だった暑い8月を何とか乗り切って、
ほっと一息ついていた、ある秋の日。
いつも通り食事もされて、ショートステイの
準備をしていたときのことです。
「敬子さんの様子がいつもと違う・・・意識が低下してる!」
私たちは、初めて救急車を呼びました。
【見出しその2:
敬子さんの入院、そして・・・】
ちょうどお孫さんの入院と重なり、
すぐには来られないという由美さんに
代わって、
スタッフが2人、敬子さんに付き添いました。
なかなか病院内に入ることができず、
救急車の中で脈が弱まっていく敬子さんを
見守りながら、
スタッフができることは体を温めてさしあげる
ことぐらいしかありません。
「このまま意識が戻らなかったらどうしよう・・・」
敬子さん、頑張って!
せめて、血中の酸素濃度がもう少し上がってくれたら・・・
必死に体を温めるスタッフに、ふと敬子さんの声が
聞こえました。
「敬子さん?」
「はあい」
よかった! 意識が戻った!
「敬子さん、もうすぐ由美さん、来るからね!」
ほどなくして搬送され、そのまま入院することに
なった敬子さんを見送って、
スタッフは病院を後にしました。
「大したことなくて、3日くらいで退院できたら、
また通所できるかな。
でも2週間以上になっちゃったら、難しいかな・・・」
「今日だって、お昼も普通に食べて、おやつも召し上がって、
とても良い状態だったんですよ、それなのになぜ・・・」
いつかは敬子さんが、「あず ゆあ はうす」に通われなく
なる日がくることも分かってはいたけれど、
まさか本当にこんな日がくるなんて・・・。
そんな思いを抱えながら、スタッフは帰路につきました。
敬子さんは一晩入院して、翌日退院し、
再び熱を出されて再入院。
「あれから由美さんから、連絡あった?」
「ううん、でもあんまり聞くのもね・・・」
その後の容体を心配しながら、1週間が過ぎた頃。
敬子さんが亡くなったという報せが届きました。
・・・・・・・・・・・・・
【見出しその3:
敬子さんと由美さんとの日々】
「あの敬子さんが、亡くなった・・・」
いるのが当たり前だった敬子さんの姿が
「あず ゆあ はうす」のリビングからなくなって、
スコーンと心に穴が開いたようだった私たちの
もとを、
由美さんが訪れてくださったのは、
敬子さんが亡くなられて数日後のことでした。
「これ、母が使わなかった洋服とリハビリパンツ
なんですけど、よかったら使ってください」
笑顔でそうおっしゃる由美さんの姿がありました。
いつも明るかった由美さん。
「おばあちゃま、行ってらっしゃい!」
と、敬子さんをお見送りされるときも、
「おばあちゃまが通える間はこちらにお世話に
なります!」
と言って、特別養護老人ホームを断る決心を
されたときも、
いつも笑顔でした。
敬子さんの状態がだんだんと悪くなられても、
泣きごとを言われることは一度もなく、
私たちを信頼してくださり、敬子さんの介護を
懸命に頑張ってこられた由美さん。
精いっぱい、在宅介護をやりきった。
由美さんには、そんなすがすがしさが
感じられました。
敬子さんご本人が自力で歩いたり食べたり
されようとするのを、
どれだけ
“待つ”ことができたか。
地味で、大仰なことは何もない日々の介護、
それをどれだけ繰り返すことができたか。
そしてそれが、どんなに難しいことであるか。
傍に誰かがいる、手に触れて、声をかけあう。
みんなで支え合う。
今の時代なかなかできない、そんな
“亡くなるまでの在宅介護”
を、敬子さんご一家は貫かれたのです。
由美さん。
今までずっとご苦労様でした。
お仕事やご家族のお世話をされながら、
敬子さんができることに寄り添い、
頑張ってこられました。
そして、敬子さん。
毎日、本当によくここまで通ってくださいました。
最後の最後まで、頑張って
“生きる”
ことを続けられましたね。
敬子さんと由美さんと過ごした宝物のような
日々を胸にして。
今日もまた、「あず ゆあ はうす」の新しい
一日が始まります。
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以上、長文を最後までお読みいただき、
本当にありがとうございました。
私自身は勿論ですが、是非、皆様にもいろいろ
感じていただければ幸いです。
今日は、終日東京でデスクワーク&打合せ。
皆様は今日、どんな1日を過ごされるので
しょうか?
では、今日も1日、互いに頑張ってまいり
ましょう!
今朝もお付き合いをいただき、ありがとう
ございました。
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活性化の中心的存在となる。
それが私たち「シービータッグ」のビジョンです。
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※このメールに書かれた内容の無断転載、無断複製については、原則OKと
します。また、その際は、「介護経営エナジャイザーの原田匡によると」
と一言付け加えていただければ嬉しいです。後は、皆様の良心にお任せ
します。
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