歩くこと、食べること、生きること(1)~あるご利用者との物語~

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介護経営エナジャイザー 原田匡が日々感じたこと・考えていること、介護
経営に役立つ情報等をお届けします!
(※)エナジャイザー:エネルギー(energy)や活力を提供する人
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本メールは名刺交換、セミナー、問合せ等を通じて原田匡と接点があった
介護事業者及びその関連の方々に送信させていただいております。
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おはようございます、CB-TAG
(シー・ビータッグ)の原田匡です。

さて、今朝は、久しぶりに、

私たちのデイサービス

“あずゆあはうす”

に通って下さっていた、

ある、ご利用者との触れ合い(物語)を
皆様に共有させていただきます。
(今回で第三弾です)

タイトルは、

“歩くこと、たべること、生きること”。

何か皆様のお役に立てれば、

という気持ちと、

私が事業所をほぼ留守にしている間、

“あずゆあはうす(As Your House)”

という名前にかけた想いを体現しようと

日々、ご利用者やご家族と真剣に向き合い、

一生懸命ケアに取り組んでくれている全ての
社員への感謝とエールの気持も込めて、

お伝えさせていただきます。

※かなりの長文なので、今日と明日に分け
させていただきますこと、何卒ご容赦下さい。
ただ、分けても長文ですが(汗)

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【その1:
「自分で歩く」「自分で食べる」を目標に】

“♪あ~おい め~をした おにんぎょは~、
あめりかうまれの せ~るろいど・・・”

「あず ゆあ はうす」のリビングの中ほどに
あるいつもの席で、

歌を口ずさむ敬子さん(仮名)がお好きなのは、

『青い目の人形』

『夕焼け小焼け』

などの昔懐かしい童謡です。

ほかのご利用者様が、調子のいい演歌などの
曲をかけると、

「それはダメです・・・」

と言って、ちょっぴりご機嫌ななめ。

いつも私たちに優しい童謡を歌って
聞かせてくださる敬子さんとの出会いは、

ちょうどこの事業所が開設された
平成20年3月1日のことでした。

数年前からアルツハイマーの症状が進み、

歩いたり食事をしたりという日常の動作が
少しずつ不安定になられていた敬子さん。

それまで利用されていた施設では、終日
車イスに座ったきりで、

歩くことはもちろん、立つことさえしない
毎日でした。

「プロの施設に預けたのに、車イスに
座らせっぱなしで歩けなくするって、
どういうことなの?」

娘の由美さん(仮名)が憤られたのも無理は
ありません。

慢性的に人手が不足している介護施設では、

十分に目が行き届かないので、歩行が不安定な
人には車イスに座っていていただくことが多く
なってしまう、

なんていう悲しい現実が頻繁に起こっています。

結果、自然と生じるのは、

介助があれば、

十分歩けるように回復したであろう人まで
歩けなくなってしまう、

という悪循環。

誰もそうしたくてやっているわけではない、

けれどそうせざるを得ない・・・

今の介護施設では、つねにその矛盾と戦って
いるところも多い、というのが現状なのです。

一方で、

「歩けない、動けない、という状況を改善したい」

と言われる由美さんは、

ご自分の娘さんやお孫さんのお世話もしながら
お仕事も続け、

なお在宅介護に重きをおき、

敬子さんのお世話にも懸命に取り組まれようと
しています。

「私が娘として、母を守りたい!」

そんな由美さんの思いに、私たちも応えよう。

そして、敬子さんご自身がまだできることは、

歩くことでも食べることでも、

できるかぎりご自分の力で続けさせて
さしあげよう。

こうして、

「ご自身の足で歩くこと」

「ご自分で食事をとること」

の2つを目標に決めて、

敬子さんへのサポートが始まったのです。

まず車イスをやめて、ソファに座っていただく
ことから始めました。

トイレや別のイスなどに移動するときには、
スタッフが歩行介助をします。

しかし、

スタッフが慣れない介助におどおどしたり、

少しでも急かすような言動をしてしまう
スタッフには、

敬子さんは決して体を預けようとされません。

きっと

「危ない」

と感じられるのでしょう、

体をつっぱり、イスから立ち上がらないのです。

トイレに座っていただくときにも注意が必要でした。

タイミングを誤って早めにお尻を支えてしまうと、
敬子さんは便座だと思って一気に体重をかけて
きてしまう。

するとスタッフもバランスを崩し、

敬子さんが尻もちをついてしまいそうになるの
です。

「敬子さんの介助は難しい・・・」

「どうしても、うまくいかない・・・」

スタッフが敬子さんの介助の難しさを口にしない
日はありませんでした。

【その2:
声をかけ、得心していただき、行動にうつす】

私たちは、徐々に歩行介助のコツをつかんで
いきます。

「敬子さーん、トイレに行きましょうかー?」

イスに座っている小柄な敬子さんの目線に
合わせるようにグッとかがみこみ、

しっかりと目を合わせて、

ハッキリとした言葉で問いかけます。

すると、敬子さんから

「はぁい」

と返事が返ってきます。

それを聞いてからスタッフは、改めて声をかけます。

「敬子さーん、立ちましょうかー」

「はぁい」

「いち、にの、さん! 敬子さーん、立てましたかー?」

「はい」

声をかけながら呼吸を合わせると、

敬子さんも両手の人差し指に全身の力を込めて
スタッフの手につかまり、立ち上がります。

「敬子さーん、歩きましょう、右足から行きますよー。
・・・みーぎ、ひだーり、みーぎ、ひだーり・・・」

「・・・みーぎ、ひだーり、みーぎ、ひだーり・・・」

私たちの声に合わせて、敬子さんも、右、左、と
声を出して歩を進めます。

重要なのは、

声をかけ、得心してもらってから、行動にうつすこと。

意思が伝わるまで、敬子さんに声をかけ続ける。

「お手伝いしてもよろしいですか?」

と聞いて、返事を待ち、タイミングを合わせる。

その繰り返しが、信頼につながり、この人には
体を預けても大丈夫だと思ってもらえることに
つながるのです。

だからそれまでは、

どんなにしんどくても何度でもトライし続ける・・・。

新しいスタートを切ったばかりの、

ちょっぴり慌ただしかった毎日が少しずつ
落ち着いていくにつれて、

スタッフと敬子さんの気持ちも近づいていくようでした。

【その3:「見て食べる」食事を】

食べることが大好きで、食欲も旺盛な敬子さん。

敬子さんの様子を見ていると、

ときどき、

食事の時間でないときにも、

食べ物を口に運ぶようなしぐさをされています。

そのような

「自分で食べたい」

という意思を敬子さんがお見せになる間は、

敬子さんご自身で食べていただこう、

そして、

どうしても難しいところはスタッフがお手伝いする、

という方法で取り組むことにしました。

大切にしたのは、

「自分で食べている感覚」

を持っていただくことです。

食べることが好きな敬子さん。

だからこそ、

“食事を頂く”

という行為を大切にしてさしあげたいと
思ったのです。

はじめに、器に盛り付けられた料理を
一つ一つ指さして、

「見て」いただきす。

「敬子さん、これがご飯、ここにお味噌汁を
置きますね。

今日のおかずはハンバーグです。

お皿はここですよ」

と、声をかけ、それぞれに手を伸ばして
頂くのです。

「おいしいねぇ、おいしいねぇ」

ひと口召し上がると、いつもこうおっしゃって、

にこっと笑って、笑顔を見せてくれます。

大好きな甘いおやつも、毎回、時間をかけて
全部召し上がってくださいました。

バタバタと走りまわるスタッフを見ては

「たいへんだねぇ」 

晴れた日には

「今日はいいお天気ですねぇ」

そんな穏やかな言葉をかけてくださったかと
思うと、

お気に召さないことがあったときには、

スタッフの腕をキュ~とつねったり、

背中を向けてばかりいるスタッフの背中を、

「こっちを向いて」

と言うように、座りながらトントンと蹴る敬子さん。

♪ゆ~やけこやけで ひがくれて
 や~まのおてらの かねがなる・・・

「敬子さん、いったいいつまで歌うの~?」

と言われるほど、ひがな一日、好きな童謡を
口ずさみ、

笑ったり、すねたり、怒ったり。

人と触れ合って過ごす、穏やかな生活。

しかし、そんな和やかな毎日にも、

「もう、これ以上、在宅介護は無理かな・・・」

と諦めかける瞬間がたびたび訪れるように
なってきました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここから弊社社員の葛藤が更に始まるのですが、

今日はここまでとさせていただきます。

本日は午前中は大学院で授業。

午後から都内でセミナーです。

多忙の中、集まって下さる介護事業者の
皆様のお役に立てるよう、

気合を入れて臨みます。

皆様は今日、どんな1日を過ごされるので
しょうか?

では、今日も1日、互いに頑張ってまいり
ましょう!

今朝もお付き合いをいただき、ありがとう
ございました。
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社会貢献と利益創出の両立に真剣で、成長・進化を目指す介護事業者に、
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行う。その結果、「地域で最も愛され、必要とされ、関わる全ての人々を
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