[ケアビジネスSHINKA論 Vol.800]

続法改正議論と高齢者の住まい

おはようございます、

(株)ケアビジネスパートナーズ の鈴木です。

今週もよろしくお願い致します。

社会福祉法人では、内部統制のあり方が大きく
問われています。

もっとも、これは社会福祉法人に限ったこと
ではなく、

事業者すべてにとって重要なテーマでしょう。

そう考えると社会福祉法人が取組む内部統制への
対応は、

他の法人格の組織においても様々なヒントがあります。

そういう視点からも注目しておきたい動向です。

では、本日もメルマガの中身に入らせていただきます。

今日の視点──────────────────────────────
■■
■■相続法改正議論と高齢者の住まい
■■
───────────────────────────────────

●現在、法制審議会において相続法の改正議論が行われています。この議論、そもそもは25年9月の最高裁の判決がきっかけになっています。嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1と定めていた規定が憲法に違反するとの決定がされ、それを受けて法務省が同規定削除の対応をするなか、様々な問題提起があり相続法制についても検討が及んだということです。これは高齢者の住まいにも影響を及ぼすもので、その観点から整理してみます。

●まず、現在の相続の手続きを簡単に記しますと、

  1. 人が亡くなり相続発生。
  2. 相続権を有する人が財産を一切合財受け継ぐ(年金受給権など、その人限りのもの等は除く)。
  3. 財産の分割
    1. 遺言がないケース
      相続人は、被相続人の総財産を共同でもち(共有)各人に帰属させる。
    2. 遺言があるケース
      遺言により、財産の分割割合、特定の財産を特定の人に相続させること、第三者へ財産を贈ること、が可能。
      ただし、ここに「遺留分」という制度があり、一定以上の財産は相続人に残さねばならない。

●さて、いま配偶者と子ども1人がいる被相続人がいるとします。この被相続人の相続財産は自宅のみです。被相続人は遺書を書き、そこに全財産である自宅を配偶者に相続させると記します。ここで先ほどの遺留分という考え方が関係します。つまり、自宅しか財産がない場合、遺言を書いたとしてもすべて配偶者にその自宅を相続させることができません。子どもが相続分はいらないということであればいいのですが、その分が欲しいということになれば自宅を売却して資金を分けることしかなくなります。そうなれば、配偶者は住まいを失うことになります。その配偶者が高齢であれば現実的に新たな住まいを探すことは大変なことです。

●そうした点を考慮し、今回の議論のひとつに同居していた配偶者に一定の権利を付与することが検討されているということです。具体的には、遺産分割の協議がまとまるまで住み続けることが出来る権利となる「短期居住権」と一定の条件を満たせば、家の所有権が配偶者以外に決まっても、住み続けることができる権利となる「長期居住権」です。この権利によって、先に想定した住まいを追われるリスクが回避されます。

●住まいは生活の基本的な部分ですから、それに関連する法的知識は重要です。特に高齢者にとっては、知らなかったでは済まされない大きな問題にも繋がるものです。政府等の統計の通り高齢者が増えてくるとすれば、相続の問題はより身近にならざるを得ず、その対応力にも事業者の力量が問われてくるのでしょう。

<参考>
http://www.moj.go.jp/content/001132246.pdf

───────────────────────────────────

以上、何かのお役に立てれば幸いです。

又、ご意見等もお聞かせ下さい。
今朝はお付き合いいただき、ありがとうございました。