[ケアビジネスSHINKA論 Vol.3077]

カスハラ問題

今や習慣となった厚労省ホームページチェック。
今週も審議会・検討会が開かれていましたが、その中にピクっとなる「義務化」という文字が。
今度はいったい何が義務化されるのでしょうか。

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■■カスハラ問題
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◆10月27日の厚生労働省の審議会において、2027年度の介護報酬改定を念頭に全ての介護
事業者に対してカスタマーハラスメント対策を義務付ける方針を固めたとのニュースを目に
しました。
「また義務化項目が」と感じながらも、この問題は今や社会問題ともなっており、業界内で
も過去の報酬改定において言及されています。
今年6月には業界業種に関わらずカスハラ対策を事業者に義務付ける改正労働施策総合推進
法が成立したところ。
それを踏まえ、介護業界の実態をもって議論されたものだと思います。

◆言うまでもなく介護業界においてカスハラは大きな問題となっており、ANN調査(昨年)
によると約8割の介護従事者がカスハラを経験したことがあると回答、現場介護士に至って
は約9割がカスハラ被害を受けたことありと答えています。
その数字もさることながら、さらにドキッとさせる調査結果もあります。
「そのうち7割弱が適切な措置を受けていない、と答えている」のだと。。

◆カスハラ被害の種類について、ネット上で検索すれば多数出てきます。
代表的なものは「身体的暴力」「精神的暴力」「性的暴力」など様々ですが、決して利用者
や入居者が加害者というケースだけではなく、その家族から…というケースも多くあります。
もちろん原因や理由がはっきりしている場合もあれば、実際に経験した人からすれば納得で
きないケースも多々かと思います。

◆なぜ介護業界で深刻化しているのでしょう。
そこには介護業界特有の以下の事情も関係しているように感じます。

??顧客との関係が深くて長い
生活全般に関わる継続的サービスの中でトラブルの種が生じやすい
??公費負担の構造
サービス料の大部分が公費で「福祉だから当然」という誤った権利意識
??行政の干渉
利用者や家族が行政に訴えやすく、事業所が圧力を受けやすい
??多様なサービス
入浴・排泄・食事・送迎などトラブルが発生しやすい細かなサービスが多い

◆介護現場においては心・身においてサポートが必要な方が直接的なカスタマー。
最新の注意をもって接しても、トラブルをゼロにすることは容易ではありません。
また基本的にサービスにおいて身体に接触することが多くあります。
事業の形態や現場の状況(1対多の現場なのか、1対1の密室なのか、他)にも違いがあり
ますね。
本当に難しい問題です。

◆業界内でも様々な対処方法が紹介され、また実践されています。
何をすれば良いのか…と気かれても返答は難しいです。
ただ個人的な経験からも考えるのは、
「内のサービスも外とのやりとりも出来るだけオープンにすること」
また
「弁護士など専門家との繋がりを持つこと」
でしょうか。
前者には、それを可能にするIT・DXサービスが存在しますし、またお高い印象のある弁護
士も業界特化型事務所があったり、気軽に相談できるオンラインサービスも増えています。
もちろんお客様(カスタマー)は大切ですが、それと同時に、いやそれ以上に現場を支えて
くれる職員を守ることも大切。
その備えやサポートがるだけでも職員のストレス軽減には繋がるはずです。

◆冒頭でもお伝えした通り、2027年度介護報酬改定においてカスハラ対策について具体的
な基準が示される見込みとのこと。
これは決して介護事業者に対してだけではなく、行政に向けて支援体制強化を求めることと
セットになると思います。
2040年に向けて約57万人の人材(新規職員)確保が必要とされる中、カスハラ対策は人材
確保・定着の最重要課題として位置づけられています。
単なる義務化対応というだけでなく、職員を守り、持続可能な介護サービスを提供するため
の経営戦略として捉えることが重要となります。

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この問題を考えることもBCPだ!となるかも知れませんね。
モームリ!
となる前に、備えや対策をしていきましょう。