ここ最近、特に高齢者施設における「囲い込み」に関して目にすることが多くあります。
今週の原田のメルマガにも情報として掲載されていましたが、厚生労働省の審議会でも度々
議論になっています。
囲い込みとは?その本質はどこに?
本日はそんなテーマです。
───────────────────────────────────────
■■
■■囲い込み
■■
───────────────────────────────────────
◆いったい囲い込みとは何を指し、何が問題とされているのでしょうか。
厚労省のホームページにある検討会等の議事録、その他メディアを確認してみると、まず
目につくのは
「利用者の選択権の侵害」
について。
利用者の基本的な選択権が奪われているというのです。
具体的には
①ケアマネジャーの変更(特定のケアマネージャーの利用)を入居条件とする運営
②併設・隣接の介護サービス事業所との一体的運営
あたりでしょうか。
でも読み進めると、その先にあるポイントが見えてきます。
③過剰サービス提供の構造的問題
◆一口に高齢者住宅と言っても分類・種類は様々で、運営形態や適用ルールも様々です。
なので全てをまとめて論じることには無理がありますが、とにかく
「施設現場で必要以上のサービス提供が行われるインセンティブが働いている」
ことが話題とされ、これにより
「利用者本位ではなく、事業者の収益最大化を優先したサービス提供」
「自立支援を重視したケアマネジメントを阻害する圧力」
「適切なケアプランよりも収益性を重視した計画の立案」
などが実態として紹介され、議論されているのです。
高齢者施設といえば少し前に採り上げましたが、人材紹介サービスや入居者紹介サービスに
支払われる報酬もずっと問題視されていますね。
◆その議題に対して、厚労省の検討会で示されている方針は以下の通りです。
『介護・医療サービスを提供する事業者の選択権が入居者・入居希望者にあることを確実に
担保する』
そして、その具体的な取り組みとして
「ケアマネジャーの独立性の担保」
「ケアマネジメントプロセスの透明化」
「事業運営の透明性の向上」
など意見が出されています。
そして、今秋中に検討会の報告書をまとめ、2027年度の制度改正・報酬改定に反映させる
予定なのだと。
◆具体的な強化項目など議論内容も紹介されていますが、ルールや義務化項目が増え、また
現場の手間が増えそうだ…という印象を受けます。
何を持って囲い込みと言うかの受け止めは様々かと思いますが、厚労省が問題として考える
“囲い込みに依存する施設”に該当する高齢者施設には厳しい議論の内容です。
厚労省の検討会議事録を見ると、『住宅型有料老人ホームの64.0%が要介護者・要支援者を
受け入れており、そのうち29.9%が中重度・難病者を中心としている。この現実は、有料
老人ホームが単なる「住まい」ではなく実質的な「介護施設」として機能していることを示し
ている。』といったような意見もあるようです。
ここでの明言は避けますが、この文章、そして表現、国が問題視しているポイントを示して
いるように感じます。
◆議論の主旨・目的は理解しますが、高齢者施設を運営するのは営利法人であることも多数。
分類的に営利法人でなくても、多くの従業員を雇用し、サービスの質を維持・向上していく
ためために、どこも収益にこだわって経営します。
当たり前のことです。
その経営戦略として、同一法人内に複数の事業部門を持ったり、その連携を強化することも
あります。
もちろん不正や過剰な活動は問題視されるべきですが、その営業活動を過度に抑制するよう
な厳格化に繋がらないか不安です。
◆介護事業はその売上原資の多くを介護保険など公的なものに依存しており、それゆえ法律
やルールへの遵守が求められます。
そして国や保険者の意向は無視できません。
厚労省の検討会や審議会の動き・議論についてみんな注目しています。
売上(粗利)を求めるためには介護保険サービスの提供を増やし、保険外サービスを実施し、
またコストを下げる。
この単純な計算式の中に規制という条件が加わることで、単純ではなくなっているのが現状
でしょうか。
保険制度やルールを議論する場に営利法人の代表なども加わり、加算やインセンティブ等の
議論だけでなく営利事業としての本質的な議論もなされることを願います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今回採り上げたテーマは、個人的にこれまでのニュース以上に気になります。
囲い込み規制強化はピンチなのか、それともチャンス(新たな挑戦のキッカケ)となるのか?
今後の動向を注視したいと思います。
それにしても最近、高齢者施設(介護施設)が集中的に槍玉に挙げられていると感じるのは…
気のせいでしょうか。