[ケアビジネスSHINKA論 Vol.3065]

特別の寄与

少し前、夏休み期間中のことですが、友人から相談を受けました。
福祉に関する仕事をしていれば、きっと皆さんも日頃から相談を受ける機会も多いはず。
その相談は介護・相続に関するものだったのですが、実父母ではなく義父母のこと。
思い返しながら、採り上げてみたいと思います。

───────────────────────────────────────
■■
■■特別の寄与
■■
───────────────────────────────────────

◆皆さん、「特別の寄与」という言葉をご存じでしょうか。
民法改正により2019年7月1日から導入された比較的新しい制度であり、日頃関わるご利用
者様のご家族、そしてもしかしたら自分の身内にも直接関わるかも知れない重要な制度です。
概略を申すと、「特別の寄与」制度は、被相続人の介護などを無償で行い、その財産の維持・
増加に貢献した相続人以外の親族が相続人に対して「特別寄与料」を請求できるという制度。
改正前の民法では、どれだけ献身的に介護を行っても、相続人として認められない限り相続
財産を取得できませんでした。
でも現実には不公平への不満の声が根強かったのでしょう、この不公平を是正するのが制度
の根本的な趣旨とされています。

◆多いのが「お嫁さん」について、例えば長男の嫁が義父母を介護するようなケースです。
従来、法的に何の権利も認められていなかった長男の嫁が、一定の条件を満たせば金銭的な
請求権を持てるようになったのです。
同居する義父母のお世話を仕事に出かけた息子(旦那)に代わってお嫁さんが担うといった
ケースは今も多いかと思います。
こうした介護の実態を踏まえて法的に救済しようとする制度です。

◆ただし、この制度を活用するためには、いくつかの注意するべき条件があります。
①親族であること?6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族が対象、まぁ広い範囲ですね。
②相続人でないこと?元々相続権がある人には寄与分があるので本制度からは除外されます。
③相続放棄等した人でないこと?すでに相続を放棄した人は対象外です。

◆この制度をめぐるトラブルも多いようですが、その代表格と言われるのは「内縁の夫婦は
対象外」ということ。
昔のドラマでもそんな場面を見たような記憶があります。
どれだけ献身的に介護を行っても、法的な親族関係がなければ請求権は生じないのです。
法律を知ればルールの理解はできますが、実際には「だから介護しはません」というわけに
はいかず。
もちろん、相続目的ということばかりでは無いことは言うまでもありません。

◆なお追加情報として、条件を満たして対象となる方であっても、お世話の何から何までも
認められるわけではありません。
制度名にある通り、「特別」の寄与である必要があります。
具体的には
①療養看護等の労務提供
?単なる金銭的援助ではなく身体を使った労務(介護、看護、家事等)の提供が必要です。
②財産の維持・増加への特別な寄与
?最も重要と言われるポイントで、親族として通常期待される程度を超える「特別」な貢献が
必要とされます。
例えば、毎日の献身的な介護により本来必要となるはずの介護施設・サービス利用料等を
削減できた場合など。
③無償性?お世話に対して対価を得ていないことが必要です。なお著しく低い対価も認められ
ることがあるようです。
④期限
相続の開始および相続人を知った時から6ヶ月以内または相続開始から1年以内の早い方。
短いですね。

◆「特別の寄与」は、きっと昔から要望の声はあったのでしょうが、最近になって新設され
た現代社会の介護実態に即した重要な制度です。
要件が厳格で手続きに期限があるため、早期の準備と適切な専門家への相談が不可欠です。
介護事業に関わるものとして、こうした制度についても正しく理解し、いざという時に情報
提供できるようにしておきたいものです。
介護は単なるケアの提供だけではなく、法的権利にも関わる重要な仕事であることを改めて
認識する事項でした。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最後の最後、でも重要な話を。?特別寄与料が認められるかは「証拠」次第です!
介護日記、写真、医療記録、介護サービスの利用状況などを日頃から記録しておくことが
重要・不可欠です。
この点も合わせてアドバイスが必要ですね。
日頃からの嫁日記、重要です!(※お嫁さんに限りません)