[ケアビジネスSHINKA論 Vol.3034]

ストローマン

いよいよ今週末には参議院議員選挙がありますね。
連日のように既存メディアはもちろん、それ以上にメットメディアにおいて様々な情報が
飛び交っています。
考えれば、国政選挙だけでなく地方選挙についても、かつてないほど(良くも悪くも)盛り
上がるようになりました。
その盛り上げを支える一つが、ソーシャルメディアの存在ではないでしょうか。
これまでも何度か触れてきましたが、改めて採り上げたいと思います。

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■■ストローマン
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◆ネットやSNSの普及により情報の流通量は爆発的に増えました。
便利さを感じることが多い反面、あまりの情報量や内容に辟易とすることも多々。
「この情報、本当に正しいの?」と疑う場面も増えました。
選挙報道・投稿の過熱ぶりを見ていても、もう何が何だか分からなくなります。
そうなれば今さら言うまでもありませんが、「情報を見極める力」つまり「メディアリテラ
シー」が重要となります。
そして最近、そのリテラシーに関していくつかキーワードも耳にするようになりました。
特に自由に情報のやりとりができるSNSでは、その特性から自分自身が危険な現象に巻き
込まれ、また他者を巻き込んでしまうことにも繋がりかねません。
そんな中、時代を反映したと言うべきか、次のような言葉をご存知でしょうか。

?ストローマン(藁人形)論法
相手の意見をわざと歪めて、または一部分を抜き取って、その歪んだ(一部分の)意見に
対して反論する。
意図的に悪いイメージを植え付け用としたり、またそれを信じた(もしくはこれも意図的
に)人が拡散したり反応したり。
よく聞く「キリトリ」という言葉にも近いのかも知れません。
論法と言われるのは、これが議論で相手を打ち負かすための方法としても用いられるため
で、有名コメンテーターの中にもこの論法と紐付けられる人もいます。
ちなみに語源は「藁人形(ストローマン)のような偽物を作り上げてそれを叩くイメージ」
からと言われます。

?フィルターバブル
インターネットのアルゴリズムが、過去の検索や行動履歴から、その人の好みに合わせて
情報を選んで表示してくれる現象のこと。
「なんか同じような広告やレコメンドばかり出てくるようになったなぁ」と感じる人も多い
のではないでしょうか。
気づかないうちに自分の関心のある情報しか見えなくなり視野が狭くなってしまう、そし
て洗脳されてしまう危険があります。
誤情報やフェイクニュースの拡散も、こうした(ある意味で)ありがた迷惑な機能が影響を
与えているのかも知れません。

?エコーチェンバー現象
これはSNSなどの閉鎖的なコミュニティにおける現象です。
自分と似た意見を持ったユーザーをフォローすることで同じような意見や価値観ばかりに
触れるようになり、特定の考えが増幅されて
しまうこと。
そして、自分たちの意見が「正しい」「常識」だと思い込みやすくなることです。
決して悪いことというわけではないのですが、多様な視点に触れることがなくなることが
他者への攻撃や排他性に繋がることもあります。

◆冒頭で選挙の話を出しましたが、もちろん選挙関連に特有なものではありません。
介護・福祉業界にあっても同じこと。
例えば現場の“ごく一部の〟問題を、さも業界全体の問題かのように大げさ語る投稿があ
れば、業界を詳しく知らない人には、その真偽など必ずしも正確には伝わりません。
悪意をもって投稿・拡散などする人はもっての外ですが、悪意なくただ信じ、それを自分
だけではなく他者にも影響を与えようとする人がいることも認識しなければいけません。

◆一口にメディアリテラシーと言っても、具体的に何をどうすれば身につくのかと問われ
ても返答に窮します。
もともと人は都合の良い考えをしがちであり、意識的、また無意識的にも自信を正当化す
る情報を得ようとしがちになります。
ネットが急速に進化することで「人間から考えることを奪った」なんて言われますが、いや
いや、より一層考える機会や必要性を提供してくれているように思います。
多様性の時代にあって、自分と違う相手を受け入れることや他者とのコミュニケーション
は決して安易・容易なことではありません。
教科書的な意見にはなりますが、
・情報の真偽を確認する
・多様な意見に触れる機会を持つ
・客観的(時に批判的)に考える
・責任を持って発信する
こうしたことをリテラシーとして鍛える必要性を感じます。

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だいぶ以前のメルマガでも書いた記憶があるのですが、私がサラリーマン時代の上司から
〝一時停止ボタン〟の教えを受けたことを今でも覚えています。
「少しでもモヤモヤを感じることがあれば、早急に判断したり結論を出すべきではない。」
「オデコには目に見えない〝一時停止ボタン〟が付いている。それを押して一息ついて、
冷静になって考えなさい。」
これまで私を何度も救ってくれたボタンです。

さぁ、週末は選挙に行きましょう!