[ケアビジネスSHINKA論 Vol.3029]

太陽のある街

今週、原田のメルマガでオムロン太陽株式会社(社会福祉法人太陽の家)について採り上げ
られていました。
そして今日は、CBPが主催するオムロン太陽ツアーの開催日です!
私もこれまで何度かお伺いしており、日本の障がい者雇用の原点とも言える現場の様子、また
“太陽”が根づく街の様子を目の当たりにし、多くの気づきを得たことを思い出します。
振り返りながら書いてみたいと思います。

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■■太陽のある街
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◆私が介護業界に飛び込んだのは今から15年前。
最初は右も左もわからず、それこそ右往左往したものです。
とにかく事業を軌道に乗せることが最優先。
それでも同業者から学び、また何となく身内や知り合いの姿に重ねながら、いつか必ず当事
者となる介護というものについて、時には希望を、時には疑問を感じながら色々考えるよう
になりました。
そして今から10年ほど前でしょうか、はじめてICF(国際生活機能分類)の考えと出会った
とき、それまでの介護観が根本から変わったことを覚えています。
ICFとは、「できないこと」ではなく「できること」に注目して、その人らしい生活を支援す
る世界共通の考え方のこと。
キッカケは書籍からの情報でしたが、それは単なる理論的な学びではなく、自立支援とは何
かを深く理解する転換点だったように思います。

◆従来の(私が考えていた)介護は「できないこと」に焦点を当てがちでした。
「歩けない(だろう)」「一人ではできない(だろう)」といった制約から思考が出発して
いたのです。
でもICFの生活機能モデルは違います。
例えば車椅子生活のご利用者について、「歩けないから制限がある」のではなく「車椅子を
使えば安全に移動できる」という可能性に目を向けるという発想を持つこと。
同じことのようで全く違う視点の転換でした。
この発想の転換は後に経営する介護事業におけるコンセプトに繋がり、そして現在取り組む
ショッピングリハビリにも繋がります。
経験や知識のあるプロフェッショナルが施設や病院の中に閉じこもってばかりいるのではな
く、積極的に街に出て生活をサポートすることの重要性・必要性を感じたのです。

◆そして、そんな中ご縁ができたのが大分県別府市にあるオムロン太陽株式会社の辻社長を
はじめとした皆様でした。
何度か現地を訪れましたが、当たり前に障がい者が働き、街で暮らす姿を目の当たりにし、
心を動かされました。
オムロン太陽の出発点とも言える太陽の家(社会福祉法人)には、こんな理念があります。
「No Charity, but a Chance!」
保護の発想ではなく機会を提供する。
障がい者が地域社会の一員として働き、そして生活する場を創造する。
決して簡単なことではありませんが、創設者の信念をオムロン太陽さんも引き継ぎ、事業を
通じて挑戦し続けてておられます。

◆その工場見学で見た光景は、まさに私が感じていたICFの考えそのものでした。
車椅子の方が高さを調整した机の上で精密部品の組み立てに集中している姿、聴覚障がいの
ある方が手話や文字盤で同僚とコミュニケーションを取りながら業務を進められる姿、誰も
が自分の考えや気持ちを発信し、そして他者の考えや気持ちを感じ取るための工夫の数々。
同社は株式会社として当然に利益追求にもこだわっておられ、そこに言い訳や制約条件など
存在しません。
実際お会いしたオムロン太陽の社員の方々が語ってくれたのは、「働くことの尊厳」「プロ
フェッショナルとしての使命」でした。
一人の職業人として、会社そして地域社会に貢献したいという思いでした。

◆介護業界において、もう何年も前から「地域包括ケアシステム」の必要性・重要性が訴え
られています。
「自助・互助・共助・公助」の各レベルで利用者の生活機能を多角的に支援していく仕組み
そのものがICFとも一致します。
介護とは生きること全体を支えること。
そんなふうに考えれば、私たちが取り組む事業の一つの意義を再認識できます。

◆オムロン太陽株式会社には次のようなミッションが掲げられています。
「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」
そして先述した、社会福祉法人太陽の家の理念は次のとおりです。
「No Charity, but a Chance!」
私たちは、何を求められ、何を為すのか。
太陽のある街、太陽の教え、今なお胸に刻み込まれています。

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本日のCBPが主催するオムロン太陽ツアー。
私は今回参加しないので、参加されている方、またお会いした時にでも感想や新たな発見
など教えてくださいね!

オムロン太陽株式会社
https://components.omron.com/taiyo/

社会福祉法人太陽の家
http://www.taiyonoie.or.jp/