「介護保険制度の要介護認定について、厚生労働省は1次判定の妥当性の検証を行う。」
今月に入ってすぐ、このようなニュースが流れました。
要介護認定とは対象者(主に高齢者)がどの程度の介護を必要とするかを7段階の数値で表し
たもので、要介護認定が下りた場合は公的な介護保険サービスを利用できます。
現場で業務に関わる人であれば、または要介護認定を受けた(受けようとする)身内がいれば
気にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
本日のテーマとして採り上げてみたいと思います。
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■■要介護認定の妥当性
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◆このニュースの基になったのは、今月2日に厚生労働省老健局で開催された社会保障審議会
介護保険部会での議論内容です。
議論のテーマはズバリ『要介護認定について』。
乱暴なまとめになりますが、話題となっているのは以下の点ではないでしょうか。
「要介護認定は、果たしてその対象者の身体・生活実態を正しく反映したものになっているの
だろうか。」
「その調査方法や認定方法は妥当と認められるものだろうか。」
◆厚生労働省は、現行の一次判定について平成21年以降に判定の基となるデータの見直しが
行われていないことを問題視しています。
それに加えて以下のような指摘もあります。
・平成19年に作成された一次判定に係る現行プログラムは、重い要介護度(要介護度4及び
要介護度5)の介護施設入所者約 3,500 人のデータを中心に判定プログラムが構築されてお
り、在宅、通所などの介護保険サービス利用者の生活環境(バリアフリーの有無など)や生活
実態が反映されていない。
・認知症を伴う利用者が増加しているが、認知症の症状が深刻でも身体機能の制約が少ない
場合、例えば認知症の周辺症状(易刺激性、異常行動等)への対応など、介護者の実際の手間
に比べ、軽い要介護度で要介護認定がなされる場合がある。
◆ただこの議論、そう簡単に進む話ではありません。
当然ながら賛否両論があり、それぞれ意見を主張しあっているのです。
例えば反対派(改正反対)の意見としては以下のようなものがあります。
「1次判定ロジックの変更は制度全体のバランスを崩すことにつながりかねない。」
「認定方法の見直しは内容によっては大きな混乱をきたす可能性がある。極めて慎重かつ丁寧
に検討する必要がある。」?一方の賛成派(改正賛成)の意見は次のとおりです。
「実際の手間より軽い要介護度で認定される場合があることは我々にとって切実な問題。認知
症の在宅ケアの負担感をより正確に反映した仕組みとすることを強く要望する。」
「制度の公平性の観点から、“今度こそ“調査・検討にとどまらず具体的な対応につながるよう
取り組んでほしい。」
両者から切実な思いが伝わります。
◆なんとも言いにくいのですが、確かに現行の認定調査について問題点は少なくないと感じ
ています。
「本当にそうなの?」「どうしてこの人が?」
医師の診断書から認定調査の実施まで、どうしても関わる人の主観が反映されやすく、また
必要な書類内容や情報が必ずしも対象者の生活実態を反映しているとは限らないことも。
難しいことだとは思いつつも、どうしても”テクニック”的なことの存在余地も残しています。
また認定審査会を含む認定調査活動には大きな工数や負荷が必要となることから、別の会議
ではコロナ禍で認められたオンラインによる実施制度を恒久化してはどうかとも議論されて
います。
ただこちらも「要介護認定は介護保険制度の根幹(なのだから拙速には判断できない)」と
の意見は根強く、簡単に進むものではありません。
◆確かに、この介護認定の制度改定は『介護保険支出の増加/減少』や『関与者の介護負担
の増加/減少』につながる広く国民に関わる問題であり、事業者にとっても売上に直結する
大きな問題です。
みなさん、どう考えられますでしょうか。
いずれにしても16年ぶりに制度の見直しに向けて調査実施されるのです。
しかも「結論は年内に出す」とのこと。
業界に関わりや関心を持つものとして、注意深く見守っていきたいテーマです。
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ちなみに冒頭に紹介した検討会は、次のように締めくくられています。
「将来的には、ケアマネジメントも含めて利用者に必要なサービスが公平に提供される仕組
みについて(中略)、要介護認定がこうした仕組みに資するよう引き続き検討を行うよう求
めたい。」
いろんなことを想定しながら、真っ当に経営・運営していきましょう。