[ケアビジネスSHINKA論 Vol.3000]

リハビリテーションについて考える

このところリハビリテーションって何だっけと考える、考えさせられることが多々あります。
私はいわゆるリハビリの専門家ではありません。
なので偉そうなことは言えませんが、「リハビリテーション」を一つのキーワードとして業界
内でつながる方々と仕事をご一緒するにおいて、ストレスを感じることが多かったのです。
『リハビリって何だったっけ?』
当たり前の内容ばかりかも知れず恐縮ですが、この場を借りて改めて考えてみたいと思います。

───────────────────────────────────────
■■
■■リハビリテーションについて考える
■■
───────────────────────────────────────

◆リハビリテーションという言葉はラテン語の「rehabilitare」に由来し、「再び能力を回復
する」という意味を持っているとのこと。
?もう少し噛み砕くと「re(再び)+ habilis(適した)」、すなわち「再び適した状態になる
こと」「本来あるべき状態への回復」などの意味です。
身体的な障害や機能低下を改善して個人が社会に復帰することを目指すプロセスという認識が
一般的かと思いますが、リハビリテーションには単なる身体的な回復だけではなく、心理的・
社会的な側面も含まれています。
つまり、身体の機能を回復することはもちろん、心の健康や社会的なつながりを再構築する
ことも重要な要素なのです。

◆今から15年前に私が介護業界入りする以前、リハビリテーションは理学療法士・作業療法
士・言語聴覚士などのプロ(専門職)が対象者一人ひとりに合ったプランを作成して提供する
ものだという認識を持っていました。
テレビ等でも、病院における(例えば脳卒中後の患者さんに対する)運動機能の回復を目指す
リハビリテーションの様子を見れば「あぁプロの仕事なんだなぁ」と思っていたのです。
もちろん今でも変わらないことかと思いますが、よりカジュアルに、特に「リハビリ」と短縮
する形で一般的にも使われるようになってきたとの印象を持っています。
認知が広まり提供者が増えることは喜ばしいことだとは思いますが、さて私たちはその本質を
もってリハビリという言葉を扱えているでしょうか。

◆専門家の方から「今のリハビリはリハビリじゃない!」との訴えを聞くことがあります。
真意のほどは様々かと思いますが、大きく二つの意味合いがあるのではと感じています。
一つは、現場の忙しさや人手不足等の理由から個々のニーズに応じたリハビリを提供すること
が難しくなっているという点。
「やりたいのに出来ない」という矢印が自分に向けられていることです。
もう一つは、本来のリハビリとは呼べないような取り組みまでもリハビリと称して実施されて
いるという点。
これは専門家としてのプライドもあるのかも知れません、同じ名称で括らないで!という訴え
と言えるでしょうか。
矢印は外側に向いています。

◆介護業界におけるリハビリテーションを考えてみます。
実は、介護保険法では直接的に「リハビリテーション」という語は用いられていません。
目的条文において「自立支援」等の言葉をもって説明され、また「通所リハビリテーション」
などサービス類型として記載があるのみです。
厚労省や関連学会等からは『生活期におけるリハビリテーションとは、身体的・心理的・社会
的な側面を含め、個人の生活機能の再獲得を支援し、社会的役割を取り戻すための包括的支援
である』など発表がなされています。
医療リハビリとの違いを明確にし、「生活」におけるという点や「参加」「回復」することが
重要視されています。
この点にこそ、介護(業界)におけるリハビリテーションの本質があると感じるのです。

◆超高齢化社会に突入して久しい我が国において、リハビリテーションの重要性はますます高
まっています。
高齢者が自立した生活を送るためにリハビリテーションは欠かせず、特に認知症や運動機能の
低下が見られる高齢者に対しては介護現場においても早期のリハビリが求められます。
それゆえ国や自治体も、機能訓練に関する加算制度を充実させ、また2021年から導入された
「LIFE(科学的介護情報システム)」においてもリハビリの成果やプロセスがデータで管理
され、見える化されるようになりました。
もちろん加算や義務化によって推進していくことに反対するものではありませんが、せっかく
取り組むのであれば、やはり意味・価値あるものにしたいです。

◆多くの方にとって釈迦に説法かと思いますが、介護事業者としての使命は『ご利用者が自立
した生活を送れるように支援すること』にあり、リハビリテーションはその一環として実施・
提供されるものです。
そのために介護事業者は、専門的な知識を持ったスタッフを採用・育成し、質の高いリハビリ
テーションを提供することが求められます。
また自社だけでなく地域との連携を強化し、地域としてご利用者やご家族が安心して生活でき
る環境を整えることも重要です。
「re(再び)+ habilis(適した)」という語源からつながるリハビリテーションの本質につい
て、業界に関わるものとして正しく認識し、それに沿ったプラン策定や活動提供を業界内外と
連携して行っていきたい。
ご利用者やご家族にもきちんと理解していただき、サービス利用を意思決定していただきたい。
そんなことを感じる場面が続いた、ここ最近でした。

偉そうに講釈のような内容となってしまい失礼しました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今から10年ほど前、ショッピングリハビリの創業者(作業療法士)に出会い、その時に初めて
作業療法(リハビリ)の本質に触れました。
患者や利用者が日常生活で必要な動作を再学習する手助けをし、それらの作業を通じて身体機能
の回復を図ることを目指す作業療法の考えは、なんちゃって介護業界人だった私にとって衝撃的
だったことを覚えています。
それ以降、業界内外において様々な療法・術・活動を通じてリハビリテーションに向き合う方々
と多く接してきました。
より柔軟に、より本質的に。
業界も自分も、日々精進あるのみです。

※祝!キリ番3,000号!
いつもありがとうございます!!