これまで、このメルマガで介護業界のDX化について何度も採り上げてきました。
個人的な関心事でもあるので日頃からIT関係者と意見交換する機会も多いのですが、とあるIT
ベンダー担当者から聞いた話が印象に残っています。
「機能性重視のシステムもそうですが、それと同時に『職員同士の連携を自然に促す仕組み』を
求められるケースも多いんですよ」
それを受けて、かつて何度も耳にした、とある言葉を思い出したのです。
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■■後工程はお客様
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◆少しづつではありますが介護現場でIT化・DX化が進んでおり、例えば電子カルテや勤怠管理
システムの導入など具体的な導入事例の話を聞くようになりました。
でも同様に、現場からは「どこに保存したのか書類の所在が分からず探す時間が増えた」「入力
ルールが統一されておらず二度手間が発生している」
といった声も聞こえてきます。
せっかく業務効率を高めるために導入したのに、どうして???
でも、ここに重要な示唆があるように感じるのです。
『テクノロジーはあくまで手段』
真の業務改善は「人と人のつながり方の再設計」から始まる(のでは)ということ。
そして冒頭で触れた(思い出した)とある言葉とは
『後工程はお客様』
です。
◆飲食・小売・その他サービスなど、どんな事業においても購入してくださる「お客様」は大切
にします。
提供する商品やサービスを価値あるものにする努力はもちろん、気持ちよく購買してもらうため
の店づくりなど準備段階から意識します。
商品やサービスに対して対価をいただくのですから当然のことかもしれませんが、この意識を内
(社内・事業所内)にも向けるべきとして、かつてコンサル会社にいた頃に何度も使っていたのが
『後工程はお客様』という言葉です。
要は、自分の次に作業をする人、使う人、見る人、そういった後工程をお客様と考えるのです。
例えば、介護現場でどのような具体例が考えられるでしょうか。
1)記録の引き継ぎ?
×「利用者Aさん、午前中機嫌悪し」という曖昧な記述?
〇「14時頃より右ひざを気にする仕草。15時の歩行訓練時、3m手前で眉をひそめる動作あり。
次回は理学療法士との連携を推奨」
→後工程の職員が「具体的な根拠に基づいたケア」を提供できるよう意識した情報共有です。
業務効率だけではなく、事故発生率の減少にもつながります。
2)備品管理の徹底?
「リハビリやレクリエーションで使う備品類の置き場所がバラバラ」という課題に対して
○使用頻度別にゾーニング
○影絵シールで配置位置を明示?など。
備品探しにかかる時間の削減が期待できます。
◆何が言いたいのかというと、業務効率化の検討において「気配り」が大切だということです。
当たり前のことだと思われるかもしれませんが、一気の業務改善を目指すべくI T・DXサービス
導入の検討と同時に改めて意識したい重要なことです。
記録の正確性を向上させることは、 サービス提供時間のロス減少につながります。?
情報共有の質を向上させることは、 新人職員の早期戦力化につながります。?
ストレス要因を削減させることは、 離職率の改善につながります。
「心理的安全性の経済効果」について、もっと意識するべきと感じるのです。
◆具体的にどうするのか。
IT・DXサービスを導入検討する際、デジタルとの融合を考えてみても良いかもしれません。
例えば、思いつくままで恐縮ですが。。
・チャットボットに「後工程チェックリスト」を組み込んでみる。
・共有カレンダーに「後工程負荷予測アラート」を設定してみる。
・タスク管理システムに「感謝ボタン」機能を追加してみる。
などなど。??
◆かつて在籍したコンサル会社で言われた(指導を受けた)こんな言葉も思い出します。
『社員が気持ちよく“おせっかい”し合える環境を作ることも、マネージャーの大切な仕事だぞ』
IT化・DX化を推進するタイミングだからこそ、胸に沁みます。
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そういえば、訪問介護事業所を運営していた頃、とあるヘルパーさんから嬉しい報告を受けたこと
も思い出しました。
「利用者宅で冷蔵庫の奥から期限切れ食材を見つけたので、次の訪問者が確認しやすいようとラベ
リングを改善したら、ご家族からとても感謝されたんです!」と。
DX化が進むほど見失いやすくなる「人と人のつながり」。
デジタルツールは「気配り」を代替するのではなく「心配り」「心遣い」を増幅する装置として活用
したいものです。
小さな気配りや心遣いが、やがて大きな業務効率につながると信じて。