みなさん、おはようございます。
金曜日のメルマガ担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。
先週、介護施設における実情について採り上げました。
時を同じくしてABEMAプライムで介護施設、特に夜間帯の過酷な労働状況と絶対的な人材
不足について特集が組まれましたが、視聴された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その番組の中で出てきた『介活』という言葉について、採り上げてみたいと思います。
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■■介活
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◆少し前からでしょうか、『介活』なる言葉を耳にするようになりました。
就活・婚活・終活などは馴染みがありますが、この介活とは?
そうです、ご想像の通り『介護活動』の略で、自分自身や家族の将来の介護に備えるため
の活動を指します。
高齢化が進む日本において介護は誰もが避けて通れない”今そこにある”問題であり、この
介活という言葉には、単に介護を受ける側の準備だけでなく、介護を行う側(家族等)の
心構えや知識の習得も含まれるのです。
◆でも「また新しい言葉が生まれたのね」など笑っていられないような事情が、この言葉
には隠れています。
この『介活』は「必要になった時、自分や両親が受けたいと思えるサービスを選べるよう
事前に情報収集など準備をしておこう」というポジティブな動機ばかりではありません。
(ネットを検索すると、こうしたポジティブな介活に関する情報提供が目立ちます。)
「介護を受けたいと思っても(必要になっても)簡単には受けられない」という現実も、
この言葉を生み出したとも言えます。
そしてこの問題は、私たち全員にとって他人事ではありません。
◆背景に見え隠れするのは、介護事業者側が受け入れる高齢者を選ぶ(選ばざるを得ない)
という事情。
これまで何度も触れていますが65歳以上の高齢者が全人口の3割を超える状況下において、
介護業界は深刻な人手不足に直面しています。
その解決策として外国人や無資格・未経験者などの受け入れ等も積極的に進められています
が、一方でコンプライアンスや訴訟リスクも大きな懸念課題となっており、どうしても一部
職員に負担や責任が集中してしまう。
ABEMAでも、夜間40人以上の認知症当事者を含む重度者をワンオペで対応する事例、勤務
時間が16時間を超える事例などが紹介されていましたが、実際に(その事実の有無は別とし
て)深刻な状況にあることは事実です。
◆では自宅で・・・という単純な話でもありません。
心身の状況によっては高齢者単独・夫婦だけでの生活は困難となり、だからといって以前の
ように親の面倒は自宅で(子供が)みることは当たり前ではなくなっています。
両親や祖父母と同居しないことで、介護に対する知識や経験が乏しい人が増え、いざという
時に何をしたら良いのか誰に相談したら良いのかも分からない。
「そういえばTVで施設紹介のコマーシャルが流れていたなぁ」と検索しても、時期・エリア
・金銭条件など希望に合致させることは容易ではなく、それなら近くで探してみよう(探し
てもらおう)と活動しても・・・
介護施設や事業者側にも以前のような余裕はなく、キャパシティにあわせて誰を受け入れる
かを選ぶ時代なのです。
◆こうした状況に対する様々な対策が話し合われています。
介護職の処遇改善や海外人材の積極登用などもよく聞きますが、もっと抜本的な議論を望む
声も少なくありません。
売上のベースが介護保険であることは変わらないまま、物価高騰だけでなく対応困難者等の
増加もあって高齢者の受け入れにかかるコストも増え続けており、そもそも経済概念が破綻
しているとの声も。
「どんな高齢者でも受け入れ、それに見合う人員や設備環境を整え、かつ職員が働きたいと
思える報酬を出す」となれば、いったい高齢者一人当たりにかかる費用はどれほどなのか。
そして、これを負担するのは国や行政なのか、本人なのか、家族なのか、誰なのか。
批判もあるかも知れませんが、こういった経済的な議論とともに今ある課題を考えていかな
いと、もはや産業としても成り立たなくなってしまうのではないかと懸念します。
そして繰り返しますが、この問題は、私たち全員にとって他人事ではありません。
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某有名評論家が、介護業界に勤める若い視聴者からの「転職しようかどうか悩んでいる」と
の相談に対し、「すぐに転職したほうが良い」と即答する場面(動画)を目にしました。
いい加減な受け答えというわけではなく、後のコメントで「日本の現状と未来を考え、社会
的意義からすれば福祉業界で引き続き頑張って欲しいと答えるのが正解だと思う。だけど、
相談者個人の人生を考えた時、もし悩んでいるのであれば別の選択肢を勧める。」と言って
いました。
自分だったらその相談者に対してどう答えるだろうか、考え込みました。