みなさん、おはようございます。
金曜日のメルマガ担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。
1月末に「高齢者・介護関連サービス振興に関する戦略検討会」なる会合が開催されました。
この会議は経済産業省が音頭をとって実施したもの。
以前のメルマガでも採り上げた、経済産業省が掲げる課題解決に関連した取り組みです。
本日は、この会合をはじめとした「保険外」の動きについて採り上げてみたいと思います。
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■■保険外
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◆この「高齢者・介護関連サービス振興に関する戦略検討会」について調べてみると、在宅
高齢者に向けた介護保険外サービスをメインテーマとし、その対象サービスについて、また
地域特性を踏まえたビジネスモデルの検討など行われたようです。
厚生労働省ではありません、経済産業省です。
同省が着目するのは、仕事をしながら家族等の介護に従事する「ビジネスケアラー」増加の
影響について。
公表された資料によれば、2030年時点でビジネスケアラーは318万人となり、その経済損失
は介護離職問題を含めて年間約9兆円を超えると推計されています。
◆背景にあるのは、生産年齢人口が減少し働く家族介護者の割合が増加しているという実情。
高齢者が住み慣れた地域で”自立した”生活を続けるため、その支援には介護事業者だけでなく
多様な主体が参画していく必要があるというのが経済産業省の考えです。
ただ民間企業にとって、いわゆる「保険外サービス」を考えるにおいて、介護保険サービスと
の競合、またそもそも高齢者や専門職とのアクセス困難など課題は多く、収益化に至る事例は
限られています。
◆では、どうするのか。
経済産業省が考える施策項目は以下の通りです。
①介護需要の多様な受け皿整備
②企業における仕事と介護の両立支援の充実
③介護に関する社会気運醸成
◆以前のメルマガでは上記のうち②について、経済産業省が策定したガイドラインや推進する
事項について触れました。
ずばり1月の検討会で主に話し合われたのは①だったようです。
高齢者向けの自費サービスの事例として、宅食や自費訪問介護、見守りサービス、高齢者向け
賃貸など。
また高齢者を含む一般中高年向けの自費サービスとしてフィットネスジム、理美容、移動販売
など具体的な事業例が報告されています。
これまで計3回の検討会が実施されており、今月中(年度内)には報告書としてまとめ、報告
されるとのこと。
現時点ではサービス振興にあたり補助金や税制優遇は想定していないようなので、まずは方針
や方向性が示され、具体的な推進策に関しては来年度に協議されるものと思います。
◆ちょうど時を同じくして本年2月27日に、公的介護保険外の生活支援や配食サービスなど
を運営する民間企業が集まって「介護関連サービス事業協会」なる団体が設立されました。
その主旨は、介護保険サービスの補完的役割として、利用者や家族が安心して保険外サービス
を選択できる環境づくりを目指すというもの。
それに加えて、介護人材不足の中でも地域で切れ目のない適切な支援が受けられるよう、保険
外サービスの醸成、産業振興に取組むと発表されています。
◆どうでしょう。
「もう介護業界だけに任せてはいられない」というメッセージのように聞こえます。
介護業界においても自立支援という言葉は耳にするものの、現場における取組実態とは乖離
しています。
そもそも総合事業を始めとした国の介護予防の方針が保険者(市町村)に十分に共有されて
いるとは思えません。
加えて、自立(介護度改善)することで売上(介護保険収入)が減るような制度のままでは、
介護事業者が本気で取り組むモチベーションにはなりにくい。
そんな状況が続く中、それぞれの省庁や民間企業が独自に動き出しているのです。
高齢者に誰よりも寄り添う私たち業界の事業者・従業者として、こういったニュースや動き
にも目を向け、そして考動ていかなければなりません。
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問題を多角的に捉えて考えるという点で、紹介した経済産業省や民間団体のニュースは意味
あることです。
ただ社会保障費や(介護問題から派生する)経済損失といった事項は、国全体に関わること。
縦割りではなく、もっと横軸で連携しながら考えていくべき問題ですね。
巨大マーケットである高齢者層、でも消費・購買という観点からは難しさがあります。
誰に商品・サービスを提供し、誰が喜び、そして誰が対価を支払うのか。
道徳だけでなく経済も、考えなければなりません。