[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2869]

仕事と介護の両立

みなさん、おはようございます。
金曜日のメルマガ担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。

少し前(とはいっても今年)の話ですが、厚生労働省のホームページが更新された際、「仕事
と介護の両立」というページについても内容が更新されました。
いわゆる「介護離職」に関するページです。
当事者になるまで準備も何も・・・という“分かっちゃいるけど”の話ですね。
改めて採り上げてみたいと思います。

──────────────────────────────
■■
■■仕事と介護の両立
■■
──────────────────────────────
◆介護離職問題について厚生労働省は、従来のような“このような問題があります”“企業は
サポート体制を強化しましょう”といったスローガン的なものではなく、もう少し踏み込んだ
内容を提示しています。
介護離職を防ぐことを目的として企業に対し、従業員が40歳になった時に「介護休暇」など
の支援制度を周知することを義務付ける案を示したのです。
もちろん背景には、家族の介護や看護のために仕事を辞める(介護離職する)人が増加してい
る現状を受けてのもの。
これまで経産省が積極的に推進してきた課題について、いよいよ厚労省も取り組もうとしてい
るようです。(もっともっと両省庁が連携して取り組んでくれたらよいのに。。)

◆企業が従業員に対して「介護休業・休暇制度」などの支援制度を周知徹底することが求め
られていますが、これには介護休業制度の利用方法や介護休業中の経済的支援(例えば雇用
保険からの介護休業給付金)などが含まれています。
そして当然ながら、周知徹底するにあたっては企業側において関連諸規定を整備し、社内に
も担当者(部署)を設置するなど対応が求められます。

◆「いきなり言われても何から着手して良いのか分からない」
そういう人のために厚生労働省は、企業が従業員の介護離職を防ぐための具体的な取り組み
を支援するためのガイドラインやプラン策定マニュアルも提供しています。
介護支援プランの策定や介護に直面した従業員への対応方法などの他、従業員へ向けた動画
による情報もあります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html

◆ずっと言われ続けていた介護離職の問題。
団塊世代が高齢者層となりつつある今、より現実的かつ大きな問題となっています。
でも皆さん、自身の親戚や友人などから相談を受けて感じたことはありませんか?
「みんな介護のこと何も知らないんだなぁ」

◆決して悪口ではありません。
思っている以上に、みんな自分や自分の親が住むエリアの介護情報を知らない。
毎月の給与から少なくない額の介護保険料が控除されているのに、その保険料がどう使われ、
自分が当事者になった時には何ができるのかを知る人は少ない。
そんな印象があります。
誰も厚労省や役所の該当ページを積極的に見に行こうとはしないですよね。
かといって、介護事業者が積極的に情報発信しているかと言われれば、何とも。。
この情報格差を埋めるための取り組みは時代の要請でもあり、また私たち業界にとって求め
られていること。
そして、そこにビジネスチャンスが生まれるのかも知れません。

◆ちなみに、この介護離職に関する問題は他の先進国でも同様です。
国や企業が介護休暇を取得しやすくするために制度化を含めて権利として推奨し、その間の
収入補償や経済支援を行う国もあります。
介護離職の問題は、個人の(そしてその家族の)人生にも大きく関わるものであり、行政や
企業の取り組みに任せるだけでなく、誰もが“いつかは自分にも関わる問題”という意識で
備えることも必要ですね。
もちろん介護する側だけでなく、介護される側も。

——————————————————————————————
ちなみに冒頭で触れた『従業員が40歳になった時に介護休暇などの支援制度を周知すること
を義務付ける案』について、もとは今年度中に法案として提出される予定でした。
先の自民党総裁選、そして今秋に行われる解散総選挙、また本件を含めて重要法案の審議が
先延ばしになりそうです。
義務化云々に関わらず、介護離職が顕在・潜在リスクとなっている企業は少なくないはず。
介護の制度や仕組みを知る私たちが、相談に対してサポートできる存在でありたいものです。

先週の『要介護は突然に』に続く『介護離職は突然に』の話でした。