[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2856]

フレイルの歯車

みなさん、おはようございます。
金曜日のメルマガ担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。

今週、付き合いのある理学療法士が主催する地域健康教室に視察参加しました。
大阪府某市の補助金交付事業として、地域の高齢者に対してフレイル予防の重要性を伝える
教室で、今回の参加者は定員いっぱいの30名ほど。
部屋の後ろから、熱心に受講し、そして体操する参加者の様子を見ながら、改めてフレイル
について考えました。

それでは本日のメルマガです。

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■■フレイルの歯車
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◆タイトルにつけた「歯車」について。
複数の歯車が噛み合うことで回転運動を別の歯車に伝え、動力に繋げる役割を果たします。
自転車や針時計など、今でも多くの器械において使われていますね。
噛み合うことで力を発揮するメリットがある一方で、たった1ヶ所でも噛み合わなくなると
全体の動力に大きな影響を与えてしまいます。

◆もう一つ、タイトルにつけた「フレイル」について。
名前を聞いたことないという方は少ないかと思います。
一般的にフレイルとは加齢に伴う機能の低下であると言われますが、では、このフレイルに
3つの種類があることをご存じでしょうか。
それが何かと言うと
「身体的フレイル」
「精神・心理的フレイル」
「社会的フレイル」

◆「身体的フレイル」とは、筋力の低下や運動機能の障害(ロコモ)、筋肉の減少(サルコ
ペニア)などを指し、リハビリに関わる人であれば良く知る内容かと思います。
状態を計測するための方法や器具もあり、実際のリハビリトレーニングにも活用されます。

◆「精神・心理的フレイル」も、特に認知症当事者の増加により注目が高まっています。
認知症だけでなく鬱状態も該当し、高齢者においては仕事(定年)やパートナーの喪失など
が原因で引き起こされることがあり、周囲のサポートが必要です。

◆そしてもう一つ「社会的フレイル」について、ご存じでしょうか。
社会との繋がりが希薄になることで生じる孤独や生活困窮などが該当します。
そして発見や関与が難しく、問題視されつつあるのがこの「社会的フレイル」です。

◆フレイルそのものは健康状態の低下を示すサインであり、決して病気ではありません。
ただし状態が改善せず進行すると病気や怪我のリスクが高まり、日常生活の質は低下します。
そして先述した3つのフレイルは、それぞれが相互に影響し合っており連鎖的に進行します。
いくら体操や運動を促しても、フレイルの根幹が別にあれば効果は限定的で、抜本的な解決に
繋がらないかも知れません。
介護予防とは、介護やリハビリの経験・スキルだけでなく、観察力、コミュニケーション力、
適応力、問題解決力など多くの能力が求められます。

◆医療・介護従事者は、日ごろからフレイルについて現場で関り、また研修や自己啓発を通じ
て勉強しているはず。
でも重要なのはそれが必要とする方々に正しく伝わり、そして意識や行動変容に繋がること。
そう考えれば、病院や介護施設に行かなければフレイル予防の知識・経験を持った人に出会い
にくい環境にも課題がありますね。
病気ではない、介護認定もつかないとなると、病院や介護施設に行く理由がありません。
自分で勉強しろと言っても「まだ大丈夫」と思っているうちは、意識は向きにくいものです。

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歯車とは、動いている状態でどれか一つでも止まると、全体の動きも止まってしまいます。
一方で、止まっている状態でどれか一つでも動き出せば、ゆっくりと全体が動き出します。
関わる私たちは、しっかりと知識を身につけ、全体を見渡して把握・理解する目をもって問題
に対応していくことが求められます。
そう考えれば、決して簡単ではない、そして重要な役割ですね。
もちろんメルマガ読者の中に、また私の周囲にも事業等を通じてフレイルの重要性を理解し、
広める取り組みをする方が多くいらっしゃり、心強い限りです。