[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2750]

高齢化先進国からケア(福祉)先進国へ

みなさん、おはようございます。
金曜日のメルマガ担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。

ビュートゾルフというオランダの在宅ケア組織をご存じでしょうか。
数年前にティール組織という組織論がブームになった際、その成功例(代表例)として採り
上げられたことで有名になりましたね。
オランダの高齢化を支える最強の集団。(詳しくはWEB等でご確認ください。)
ここ最近、改めてこの組織の名前を聞く機会が増えています。

というわけで本日のメルマガです。
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■■高齢化先進国からケア先進国へ
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◆ビュートゾルフ(Buurtzorg)は、英語に訳すと「Neighborhood Care」。
地域看護、ご近所ケアといった意味ですかね。
もう少し活動主旨を加えると、地域在宅ケアと言えるでしょうか。
オランダの看護士が2006年に創業した非営利在宅ケア組織で、初期メンバーはわずか4人。
そこから急速に成長し、現在では1万人を超える看護師や介護士が所属しています。

◆その活動は看護師を中心とした小規模運営によって行われ、地域社会や患者(利用者)に
密着して質の高いケアを提供しています。
小規模かつ自律的チームが患者(利用者)一人ひとりに合わせたパーソナライズされたケア
を行うことで、高い効率性と顧客満足度を実現しています。
その特徴として有名なのは以下の点です。

①玉ねぎモデルと呼ばれるケアモデル
中心にケア対象者である利用者が置かれ、その外に家族、友人、隣人という周囲のインフォ
ーマルネットワーク、次にビュートゾルフチーム、そして医療専門家のフォーマルネットワ
ークという形で構成される、利用者の自立支援型モデル。
組織にマネージャー的存在はおらず、チームメンバーに上下階層はなく、それぞれが自律的
にチームを運営・管理している。

②ICTの積極活用
看護師全員にタブレットが配布され、いつでもどこからでも「ビュートゾルフ・ウェブ」と
いう専用の情報共有システムにアクセスできる。
そのシステムを通じて1万人の仲間と繋がり、情報交換ができ、また医療情報の管理・評価
からスケジューリングまで効率的に行える。

◆そしてもう一つ、特筆すべき特徴として

③オハマシステムの導入
全人的見地からみた地域看護活動の標準的分類のことで、「どのようなケアを行ったか」では
なく「どのような成果(アウトカム)に繋がったか」というケアの質を評価するシステム。

先週のメルマガで採り上げた「アウトカム」です。
このシステムでは「問題分類」「介入方法」「評価」それぞれに細かいコードが設定されてお
り、この方式に沿って記録することでどのような問題にどのような手法でアクセスし、結果と
してアウトカムはどうだったのかを俯瞰的に細かく知ることができるものです。

◆「やっぱり福祉先進国は違うなぁ」「オランダが羨ましい」などと思うなかれ。
実はオランダも、もともとは日本と同じく、定められたサービス・予算・実施時間に沿って
ケアを行い、報酬もそれに準じた出来高払いだったのです。
なのでサービス事業者も、できるだけ多くのサービスを売り込むことが企業収益に繋がると
いう考えが主流で、同じ利用者に何人もの看護師や介護士が関わったり、過剰なサービスが
提供されるのが常態化していたようです。
その過剰なケア提供の結果、看護師や介護士の負担が大きくなり、その後に深刻な看護師・
介護士不足を招いたと言います。
またサービスの内容が標準化・固定化され、顧客の選別という問題も生じたのだと。

◆そのような状況を現場で肌身に感じながら仕事をしていた一人の看護師が、在宅ケアに新
しい考えを取り入れたいと設立したのがビュートゾルフです。
そのコンセプトは「役所仕事ではなく、人間らしい仕事をしよう」というシンプルなもの。
その後の急成長はご紹介の通りです。

◆先日、医療・介護報酬改定の全体像が発表されました。
何年も前から謳われている「地域包括ケアシステムの整備」が今回も強調されており、また
アウトカム評価の整備も具体化してきました。
日本は高齢化先進国と評され、私たちもそのように認識しています。
でも目指すべきはケア(福祉)先進国。
そのために現在の介護・医療制度のままで良いのか、事業者の意識・見識のままで良いのか。
もっともっと、謙虚な心持ちで他国に学ぶべきことが多いように感じます。
ちなみに、日本でも2016年11月にビュートゾルフ日本法人が設立されています。

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ネットで見つけたビュードゾルフで働く現役看護士の言葉を紹介して終わります。
「私たちはより自由になって、より尊重されるようになったおかげで、どうすれば利用者に
最高の医療を提供できるか、その正解に近づけたと感じています。
多くの官僚主義的な仕事に煩わされることなく、自分たちの好きなこと、つまり利用者に
医療を提供することができるようになったのです。」

今週もお疲れ様でした。
ステキな週末をお過ごしください!