[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2718]

弥や生ひ月

みなさん、おはようございます。
金曜日のメルマガ担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。

早いもので今日から3月、何かと忙しい年度末の月となります。
この3月、和風月名では弥生と表されます。
和風月名について、もとは旧暦で使われていたものですが新暦の今でも使用されています。
まだ朝晩など寒い日が続きますが、それでも暖かさを感じることも増えました。
弥生(3月)は春の訪れを感じさせる、ウキウキする季節ですね。

それでは本日のメルマガです。

──────────────────────────────
■■
■■弥や生ひ月
■■
──────────────────────────────
◆改めて弥生とは、陰暦(旧暦)の3月を指す言葉であり、現代の暦でも3月の別名として使
われています。
調べてみると、「弥(や/いや)」には「いよいよ」「ますます」「前よりも一層」といった
意味があり、かつては「彌生(いやおひ/いやおい)」とも呼ばれていたようです。
春を目前にする3月は草木がますます生い茂る時期であることから、弥生の語源は「木草弥や
生ひ月(きくさいやおひつき)」に由来すると考えられているようです。(ネット調べ)

◆弥生から連想するものはと聞かれ、弥生会計と答えるあなた・・・ビジネスマンですね!笑
本日は、国内ソフトウェアサービス大手である弥生株式会社(弥生会計)について採り上げて
みたいと思います。
かつて(今でも)家電量販店の一角に弥生会計ソフトが大量に並び、多くの方が買い求める姿
をよく目にしましたね。
広告宣伝もあって、事業を始めたらまずは弥生会計!という独り勝ちの記憶があります。

◆この弥生は、もとはオリックスのグループ会社(2014年にグループ入り)でした。
オリックスは同社を買収した当時は、ストック型事業基盤の獲得、サービスメニューの拡充、
そして弥生が得意とする小規模事業者という新たな顧客基盤の獲得、という3つを目的とした
「戦略的買収」と位置づけていました。
確かにオリックスの主力事業であるリース・ファイナンス事業を考えれば、弥生事業との組み
合わせは良さそうに思えますね。
でもオリックスは、2022年にKKRグループというアメリカの投資会社に同社を売却します。
オリックスのリリース記事によると「小規模事業者向け業務ソフトウェアサービス市場におい
ては、よりダイナミックな成長が必要とされているため資本政策の見直しが必要になった」と
いう理由が記されています。

◆実際に、ソフトウェアサービス市場においては、新興企業であるfreeeやマネーフォワード
が「クラウド」をキーワードとしたサービスを展開し、一気の顧客獲得を果たしています。
売上高成長率で比較すると、弥生は新興2社に直近2年でも10倍の差をつけられています。
ただ収益(経常利益)で見ると、弥生は毎年50億円前後の黒字を続けており、利益率は下降
傾向にあるとはいえ他2社に比べると圧倒的な利益体質だと言えます。
もちろん弥生が有する顧客基盤あっての数字なのですが、決して安心することは出来ません。
freeeやマネーフォワードは、サービス開発はもちろん広告宣伝費や人件費など顧客獲得のた
めの先行投資を積極的に続けており、その将来への期待からP/Lの赤字を許容した株価推移
となっています。
B/Sを比較してみても、その経営方針は明確です。
ネットで関連記事を検索すると、このような言葉が出てきます。
『稼ぐ弥生、責めるfreee・マネーフォワード』
『効率重視の弥生と積極投資のfreee・マネーフォワード』

◆freeeやマネーフォワードの戦略は、よくブリッツ・スケーリング事例として紹介されます。
ブリッツ・スケーリングとは、投資家から集めた潤沢な資金を背景にして、短期的な非効率
や赤字経営を許容しつつ、最終的にWinner Takes Allを目指す成長戦略の手法のこと。
Ai技術の加速(導入)も相まって、ますます成長・拡大のスピードを増しています。
弥生からすれば、相当な脅威に映っていたのではないでしょうか。

◆売却したオリックスの想い、また受け入れたKKRの想いはそれぞれです。
ただKKRグループは世界中で同業種の成長を手掛けた経営ノウハウを有しており、また投資
に対する考え方も積極的です。
単なる会計サービスとしてではなく、関連する様々なSaaSソリューション・クラウドソリュ
ーション等との連携も期待されます。
日本における会計ソフトのクラウド化はまだまだ道半ば。
少し古いデータですが、2020年時点での会計ソフト全体におけるクラウド会計ソフトの利用
率は21%ほど。
今後の三つ巴の闘い、また新たなサービスの台頭など楽しみです。

◆なんとなく、あくまで個人的な想いではありますが、弥生会計の今後の成長戦略に注目して
います。
過去の経営基盤に守られて、これまで大きな収益を出してきた弥生会計。
マーケティング分析で良く用いられるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
でいえば「金のなる木」でしょうか。
どのような事業・業態にも寿命があり、ライバルとの競争のなかで自社事業にも変革が求めら
れます。
新しいグループのもとで、業界内での「花形」スターの登場にヒヤヒヤするのではなく、自ら
成長ポートフォリオを描きなおすこと。
旧態然とした私たちの業界で求められる成長戦略にも、どことなく通じるものがあるような気
がするのです。

——————————————————————————————
新たな芽生えや持続的な成長を目指すために、皆さんにとってこの弥生が言葉通りの季節や
キッカケとなりますように。
みなさんにとって『弥や生ひ月』となりますように。
頑張りましょう!!

今週もお疲れ様でした。
ステキな週末をお過ごしください!