[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2679]

異なる過去、同じ未来①

みなさん、おはようございます。
ケアビジネスパートナーズの尾添です。

縁あって今週、韓国へ出張に行って来ました。
キッカケは、日本に住む韓国人ビジネスパートナーに聞いた高齢者見守りシステムに関心を
持ったこと。
そこから韓国における高齢化の実態、そして課題に対する官民の取り組みを知りたいと感じ、
実現しました。
目的だったIT会社をはじめ民間企業とのミーティングはもちろん、そのシステムを導入して
いる自治体の担当職員、また公的機関の職員など多くの方々とディスカッションする機会を
持つことができ、とても充実した出張となりました。

今週・来週と、そのレポートをお届けできればと思います。
今回は、課題その①として、高齢化の前に少子化についてお届けします。

それでは本日のメルマガです!

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■■異なる過去、同じ未来①
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◆本日のタイトル『異なる過去、同じ未来』とは、ある国際学術会議で登壇した韓国人教授
が発した言葉です。
「東アジアの3ヶ国(日中韓)は、歴史的軌跡は異なるものの、急激な社会的衰退に直面し
ているという点では同じです。」
その共通する課題の一つが、進行する少子化・高齢化、そして社会保障の限界です。
そして、同教授が特に危惧するのが少子化の問題。
特に韓国では、2022年の出生率が0.78人と世界で最も低い危険水域に達しています。
同じ2022年で見ると、日本は1.26人、中国は1.09人。
これまで高速経済成長を果たし経済大国の一角を占める東アジア3ヶ国は、時を同じくして
人口絶壁に直面しているのです。

◆なぜ韓国ではここまで少子化が進んだのか。
ネット上に様々な分析や報告があるのですが、現地で実際にインタビューした内容だと少し
印象が異なります。
誰もが口を揃えて言うのは「子育てに多額のお金がかかる」ということ。
学校以外に塾にかかる出費(投資)が大きいことは良く知られていますが、今もそれは変わ
らず、多い子供は1日(週でも月でもなく1日です!)に4件の塾をハシゴするのだとか。
有名講師となれば年収数億円は当たり前で、トップは20億円を超えると言います。
そして、その塾費用を含めて高校を卒業させるまでに親は数千万円をかけるのです。

◆大学に入ってしまえば終わりかと思いきや、韓国内では就職事情にも課題があります。
2021年の韓国の有効求人倍率は0.5%、何年もの間、求職者数に比べて求人数が半分という
状況が続いています。
そして若年(15~29歳)失業率も10%前後の高水準が続いています。
親の負担はいつまで続くのか・・・です。
でも現地で聞くと、働けないというだけではなく、働かない(働きたくない)という側面も
見えてきます。
インタビューした人の話では、一生懸命勉強してきた若者はIT業界など華のある業界志向
が強く、サービス業や土木建築運送また介護など現場仕事を敬遠する傾向があるようです。
その方曰く「おかしなプライド」なのだと。
国内では飲食店で働こうとしない学生が、留学先の海外では喜んでマ〇ドで働くそうで・・・
何となく気持ちは想像できますが。

◆若者が働かない飲食店では年配者のスタッフが目立ち、そして従業員の数は少なく、常に
忙しく動き回っています。
とても回らないように思えるのですが、その状況をIT化や徹底的に効率化された仕組みが
支えています。
IT化につて、タッチパネルでの注文は当たり前で、中には自席で注文と同時にクレジット
決済まで行える店も。
レジ利用を含めて、周囲を見てもほぼ全員がスマホ決済かクレジット決済であり、現金を使
う機会がありません。
人がいないという問題を、ITやシステムで補っているのです。
このことは、飲食店だけでなく後に訪れた介護福祉の現場でも目にすることとなります。

◆国や自治体として、何もしないのかと言えばそうではありません。
その一つが、積極的な起業サポートです。
今回訪問した龍仁市でも、産業振興センターなる組織が起業家に対して格安でのオフィスや
研究拠点・設備の提供にはじまり、経営コンサルティング、資金支援、マッチングなどマン
ツーマンでサポートしていました。
同センターには年間300件を超える申し込みがあり、審査のうえサポート対象者(起業家)
を決めているとのこと。
業種的にIT関連が多いとのことですが、ネイバーやカカオなど大成功したベンチャー企業
の存在(影響)があると思いますし、そもそもITインフラが国全体に整備されていること
が大きな理由かと思います。
来週に採り上げますが、訪問した龍仁市では65歳以上の高齢者の9割以上がスマホを持っ
ている(!)とのこと。
「良いアプリを開発すれば使ってもらえる」となれば懸命にシステム開発を進めるでしょう
し、実際にそのシステムが地域課題の解決に使われるという循環が生まれています。
若者のチャレンジを行政が後押しし、それにより社会・地域課題の解決に繋げる。
韓国が目指すデジタル立国の一端を見たような気がします。

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来週は、少子化と同時に進む『高齢化』に伴う地域課題に対して、行政や民間がどのように
取り組んでいるのかについて、実際に目や耳にした内容をお伝えできればと思います。
感じたキーワードは『デジタルとインセンティブの活用』です。

今週もお疲れさまでした。
ステキな週末をお過ごしください!