[ケアビジネスSHINKA論 Vol.2645]

移食住

みなさん、おはようございます。
毎週金曜日の担当、ケアビジネスパートナーズの尾添です。

今週水曜日、某市役所の皆さん向け勉強会にてスピーカーの一人として登壇する機会をいた
だきました。
四方を山で囲われた中堅地方都市だったのですが、高齢化だけでなく産業活性化についても
大きな課題と認識しているのだと。
ショッピングリハビリ事業についてご期待いただいていましたが、当日にテーマとして採り
上げたのが今日のメルマガタイトル『移食住』です。

それでは本日のメルマガです!

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■■移食住
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◆『衣食住』という言葉はよく耳にされるかと思います。
説明するまでもなく、その意味は「衣服と食物と住居」「人が生活するうえで必要かつ基礎と
なるもの」といったもので、生活の三大要素など言われることもあります。
どれをとっても不可欠なものばかりですが、決して当たり前にあるものではないですね。
私たちは、お陰様で生活できています。

◆さて今日のテーマは『衣食住』ではなく『移食住』です。
個人でなく街単位で、その持続可能性のために重要となる組み合わせだと考えています。
もちろんショッピングリハビリ事業を展開しているから関心を持っていることもありますが、
この『移(移動)』について、もっと世間の関心が高まっても良いのではと感じる場面が多々
あります。

◆少子高齢化が進む現状は、特に高齢化率30%を超える地方都市においては様々な課題に
直結しています。
その一つ、大きな課題だと考えられているのが『移動』の問題です。
もちろん移動しなくても生活できるための便利なツールやサービスは増えており、ますます
利便性は高まっていくものと思います。
でも一方で、移動問題は高齢者の健康寿命に大きな影響を与えています。
高齢者が自分の足で外出することで身体活動や社会参加が増え、認知症や骨折などのリスク
が低減されます。
逆に、移動困難な高齢者は孤立や介護依存、そして病気に繋がる可能性が高まります。
これらは様々なデータとして発表されていますし、直感的に理解できることかと思います。

◆地方都市においては人口減少やモータリゼーションの変化により、特に公共交通の利便性
が低下しています。
新型コロナウイルスの感染拡大は、この傾向をさらに加速させました。
高齢者は運転することをやめたり、免許を返納したりすることで移動手段が限られるように
なりましたが、その代替手段の準備・提供は決して十分とは言えません。
もちろん国や自治体、また多くの企業が代替交通や移動支援事業などに取り組んでいます。
ただ現実には利用率が低かったり、事業として継続されなかったりするケースが目立ちます。
私もプロジェクトに関わってみて再認識したのですが、利用を促したい高齢者の本音は
「バス停まで歩くのがしんどいし、車の乗り降りもしんどい」
「そもそも目的地についてからの移動に支障があるのだから出かける気になれない」
「サポートも目的もないのに出かけましょうといわれても困る」

◆移動ニーズの把握や生活者目線のサービス設計が不足しているという課題をどうするか。
ここで出番となるのが、私たち介護・福祉事業者だと思うのです。
何といっても、誰よりも高齢者のことを知っているのですから、その知識や経験を街づくり
に活かさないのはもったいない!
今後、街づくりにおいて必要だと考えるのは、以下のポイントです。
①高齢者と直接コミュニケーションを取り、移動に関する潜在ニーズを把握すること。
②交通と福祉の連携を強化すること。
③上記②を含め、切れ目のない交通サービスを実現すること。

◆やっぱり、介護・福祉事業者の出番です。

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最後は『衣食住』に戻ります。

『衣食足りて礼節を知る』という諺(ことわざ)があります。
その意味は、「人は生活が豊かになって初めて、礼儀正しくなり節度をわきまえられるように
なる」というもの。
どうしても私たちは「あれがない、これがない」など現状に不満をぶつけがちですね。
もちろん環境の改善を為政者に求めることも大切ですが、自分自身が努力すること、そして
「恵まれていること」へ目を向けることも時として必要かと思います。
なんでもかんでも「足りてないぞー」と非礼な振る舞いばかりすることは避けたいものです。

みなさん今週もお疲れさまでした。
素敵な週末をお過ごしください!